第44回 | 2021.08.30

LINEで検証! 家庭菜園は新規就農のきっかけとなるか

8月31日は「やさい」の日、今回のテーマはこちら

地域の農業振興、新規就農者の確保に向けて、
「道の駅で繋がる就農支援のコミュニティ路線(LINE)を創りませんか?」というお話です。

多くの人が使っているコミュニケーションアプリのLINE、もはやLINEなしでは困るという人もいるでしょう。
このLINEを使って、昨年から委託事業でプランター野菜の栽培指導を行っています。

事業概要は以下のとおり。
①野菜の生育状況に合わせた栽培情報の配信
②チャットによる質問への対応

プランター栽培も家庭菜園も、ネットで調べれば簡単でしょう〜、って思いますよね。

たしかに、ネットで調べるとたくさん情報は出てきます。しかし、情報がたくさんあるが故にどれが正しいのか判断がつかない。そして、自身の野菜の状況にちょうどよく当てはまる情報が見つからない、他のサイトと見比べようと調べているとけっこう時間がかかる…

そう、一番のメリットはネット検索の手間と時間を省けることにあります。LINEでは写真も送信できるので、野菜の状態を見た上で個別にアドバイス内容を判断できることもポイントです。

 

さて、LINEによる栽培指導付きで家庭菜園を始めた人はどのような意見を持っているのか、アンケートを行いました。結果を見ると、「勉強になった57.8%」、「子供の教育(食育)になった58.8%」、「他にも育ててみたいと思った68.6%」の回答が多く、大人・子ども含めて知的関心が高まったことが伺えます。また、「家族とのコミュニケーションが増えた46.1%」という意見が多かったことも喜ばしい嬉しい結果です。

図1: アンケート結果1

 

次に、家庭菜園をきっかけに農家になりたいかどうかを問う設問では、野菜づくりをしたい、興味がある、といった回答が約4割ありました。

図2: アンケート結果2

図2の結果を見ると、「新規就農者の確保に向けて家庭菜園の普及は効果的だ!」と言いたいところですが、就農することはそんな簡単な話ではありません。そこで、新規就農者の確保・育成に向けた一助として考えられるのが、道の駅を核とした就農支援プラットフォームの構築です。
就農に向けた支援として、まずは気軽に農業を始められる環境が必要であり、悩みや相談に対応するコミュニティの存在が重要です。そこで、出荷者が集まる道の駅を就農支援プラットフォームと位置づけ、市民農園で栽培、道の駅で販売の実戦経験を積むことで、農業者の育成に繋がると考えます。
日本全国の道の駅は、令和3年6月11日までに1,193駅が登録されており、コミュニティの場所としては、うってつけの場所です。道の駅としても、苗や農業資材の販売、新たな客層の確保、出荷者の増加に期待できます。

 

図3: 道の駅を核とした就農支援体系図

 

図4: 就農までの段階別の課題と必要な支援内容

 

手軽に始められるプランター栽培ですが、野菜や植物を育てたことがない人にとっては失敗することもあります。そこに、LINEという身近なツールで質問できることは便利ですが、就農に向けたステップアップとしては、現場での体験や、農業者からの生のアドバイスは何より効果的です。

特に昨年から、テレワークの普及や、外出自粛により「おうち時間」が増えたことで、家庭菜園や市民農園への関心が高まっています。全国の市民農園は令和元年度時点で約4,000件設置されており、その約半数が関東にあります。また、市民農園のうち約3割が市街化区域にあり、平成30年度から令和元年度にかけて、生産緑地地区内の農園数も大きく増加しています(対前年比37.3%増)。
新型コロナウイルスの影響と、生産緑地の2022年問題により、今後、都市部近郊の生産緑地を活用した市民農園の拡大が見込まれ、家庭菜園は更に広まっていくと考えられます。

長い目で見た際に、家庭菜園の普及が就農の入口になるかもしれませんね。


副主任研究員 岡田 寛史