第21回 | 2018.01.29

農家主体の6次産業化のために考えること、5つ

近年、多くの市町村が6次産業化や特産品の開発に取り組んでいます。地域資源の活用がその土地の経済成長に繋がることは言うまでもありませんが、多くの6次産業化は商品化止まりであることが多いです。まず、6次産業化は商品化がゴールではありません。収益化して持続的に事業が回って初めて、6次産業化と言えます。では農家主体による6次産業化を成功させるために考えるべき点は何なのか、以下に大きく5つあげます。

①作業の平準化
日々の農作業をこなしながら、加工品の製造をするのは大変なことです。理想を言えば、農閑期に加工作業を集中させることです。まずは、自身の生産品目と作業量を整理し、年間の作業計画を立てることが必要です。

②原料の保存性の確保
6次産業化の最大のメリットは、規格外品を加工に回して販売することで新たな収入源を得ることです。廃棄量を減らし、農閑期に加工作業を集中化させるためには原料を一旦ストックし、そのための保存方法を考えなくてはなりません。一番簡単なのはそのまま冷凍することですが、大型のストッカーが必要になります。商品の最終形態にもよりますが、ここで一次加工しておくと今後の作業性や保存スペースを考えると有効な場合があります。地域に加工場がある場合は、パウダーにしたりピューレにしたりすることも有効です。まずはどのような商品を作りたいか考え、その商品に適した一次加工形態を考えましょう。もしかすると、この一次加工品がそのまま商品になる場合もあります。また、パウダーやピューレにしておくことで、加工品としての活用の幅も大きく広がります。

③加工場の整備検討
販売のための食品を調理する加工場は、それ専用のものでなければなりません。売れるか売れないかも分からない商品を作るために、多額の設備投資をするのはかなりのリスクを伴います。いきなり加工場を設けるのではなく、まずは委託製造や知り合いの加工場でテスト製造を行い、試験販売することを推奨します。

④販路の確保
加工場を整備して商品化に成功しても、商品を売る手段と場所がなければ意味がありません。商品を作ったはいいが売場がないという話が多々あります。商品を作る前にどこで売るのか、どのような人に買ってもらえそうかを考えなければなりません。または、商品を作る前に商業者等と相談し、どのような商品を求めているのか、どれくらいの価格帯であれば取引してもらえるか、事前の相談と交渉を行ないながら商品化と販売計画を立てるのも有効です。

⑤適切な売価設定
多くの場合、まずは直売所等で販売し、商品を卸販売することを考えていません。卸販売する場合、送料や販売手数料が必要になり、その分の金額を売価に当て込まなければなりません。卸販売する以前の話に、直売所等で販売されている商品は安すぎる印象があります。規格外品を使っているからという理由だけでなく、製造にかかる手間賃や光熱費、加工場の維持費や減価償却費、原料の保存のための費用が含まれていません。直売所で商品の人気が出て、新規取引先が見つかるのは大変良いことですが、適切な売価設定が出来ていないまま取引が始まると、実は利益が1円もなく気づいたら赤字になっている場合もあります。自身の手取り額を考慮し、きちんと原価計算したうえで、適切な売価設定をすることが必要です。

農家にとって、生鮮のまま売れるのが一番良いことであり、6次産業化は更なる所得向上のための1つの手段に過ぎません。故に、規格外品だからと言って商品の原料代にしても安く見積もる必要はありません。事業を継続させられる作業計画とビジネスモデルができなければ、6次産業化をする意味がありません。

私たちの会社では、農家の所得向上を第一に考え、地域における特産品の開発支援や、加工場の整備検討等の業務を行なっています。地域活性化のためにも、これからの農業の発展のためにも、一つでも多くの課題を解決していきたいと考えています。


研究員 岡田 寛史