第31回 | 2018.10.16

花きの消費拡大に向けて③
~産地のブランド化を考える~

花きの産地について、国内でもっとも消費量の多いキクについてはこれまでのコラム(花きの消費拡大に向けて②~国内で最も消費量の多い品目『きく(菊)』の現状と課題~)で述べてきたが、その他の品目、例えば切花消費2位であるユリ、3位のバラの産地の認知度はどの程度あるだろうか。産地がすぐに思いついた方は非常に少ないと思う。同じ農産物でも野菜や果物に比べて花き産地の認知度は圧倒的に低いのである。
ちなみにユリは埼玉県、バラは愛知県が最も出荷量の多い都道府県である。(農林水産省ホームページ参照)
今年度、花き産地のブランド化支援に携わらせて頂いていることもあり、今回のコラムでテーマとして取り上げる。

我々は普段から業務で様々なアンケートを実施するが、よく実施するアンケート内容で「農産物(野菜・果物)を購入する際の判断基準は何か」という質問をする。すると毎回「鮮度」、「価格」、「安全性・安心感」などが決まって上位の回答として得られる。
また、他に多い回答として「生産者」や「産地」という回答がある。例えば最近スーパーマーケットや農産物直売所でよく目にするのが「生産者の顔の見える野菜」である。生産者の名前だけでなく、顔写真付きの売場や出荷者リストなどが設置されている地場野菜コーナーをよく目にするのではないだろうか。生産者の顔が見えることで安全性や安心感が高まったり、特別な品目、栽培方法などで付加価値が付き生産者自体のファンになったりし、購買意欲を向上させている。

産地については、ひとつの品目で異なる都道府県の産地が選べる状況は多くはないと思うが消費者毎に「リンゴだったら○○県産」、「キャベツだったら○○県産」がいいなどと決めている消費者も多いのではないだろうか。

しかしそれは野菜や果物の場合であって、花きの場合はどうだろうか。花きを購入する際に産地・生産者を判断基準としている人は少ないだろう。そもそも花きには販売時に産地を表示する義務がない。生産者の顔を出して販売している売場も一般的な販売店ではなかなか目にすることはない。花きは「生産者」や「産地」が購入する際の判断基準にはなりにくいのである。
国内の花き消費量が減少している状況において今後は消費者に選ばれる「産地」、「生産者」となるためのブランド化を進めていかなければならない。

花き産地のブランド化に向けた課題を簡単に整理すると以下の通りである。

次にブランド化に成功している花き産地の事例をいくつか紹介する。


以上の事例より、花きに限ったことではないし今更明言することではないが、産地をブランド化するためには、生産体制を確立し圧倒的な出荷ロットを確保することが最も重要である。品質については価格重視の事業者・消費者も多くいるため必ずしも高品質である必要はないが安定化させる体制作りは必要である。そのうえで品種開発や資格取得などによる他産地との差別化や、流通事業者に対するプロモーション、独自の販路確保でブランド化している。

小ロットの産地がブランド化できないわけではない。販路の確保(小売店舗・輸出等)が実現できれば限定的ではあるがブランド化を実現することが可能である。詳細はここでは述べないが塙町のダリア(福島県)は大手小売り店と連携しブランド化を成功させている事例である。

花きも他の農産物と同様に生産者の高齢化や担い手不足による生産力の減少、安価な輸入品のシェアの奪い合い等、課題は山積みであるが、花きの消費拡大に向けて今後も産地のブランド化を支援していきたいと思う。


研究員 中山 賢