第39回 | 2020.12.30

年の瀬に市場へ
~今年はお家でおせちをつくろう~

年の瀬みなさまいかがお過ごしでしょうか。

会社全体の大掃除が25日にあったものの、あいにく参加できなかったので、一人大掃除をするべく29日の午前中に会社の片づけを終え、「ブランチ横浜南部市場」へいきました。

さて、“市場”と言っても世の中には多くの“市場”があります。

東京には2018年に開業した豊洲市場や、今なお賑わいがある築地市場、また、札幌市内屈指の観光スポットでもある二条市場や金沢市民の台所で有名な近江町市場などなど。

この中で、一つだけ法律上異なる市場があります。

それは、豊洲市場です。略さずに正式名称でいうと、「東京都中央卸売市場豊洲市場」で、この“卸売市場”というのは、卸売市場法という法律のもと、食品流通の適正な取引と安定供給を目的に設置されていて、開設を認められていない市場は“卸売市場”という名を冠してはいけないことになっています。また、基本的には許認可された業者が取引できる場所であり、一般消費者への販売は禁止で、BtoBの場であるのも特徴です。

“卸売市場”は、全国各地から商品を集荷してスーパーや飲食店等へ分荷する機能をもち、競り取引等により、高く売りたい産地側(卸売業者)と安く買いたい業者側(仲卸業者・買参人)によって価格形成機能が成り立ち、良い商品を高く、大漁になった際は安く商品を迅速に捌く機能を持っています。元々は米騒動による独占的な価格形成が問題視されたことで、この法律と仕組みができたといわれています。

 

では、その他の市場は何なのかといいますと、築地市場は豊洲に移転されるまでは、れっきとした“卸売市場”でした。しかし、市場外にあった一般向けの場外市場だけが現在位置に残り、“卸売市場”の機能は豊洲に移転されました。二条市場や近江町市場は、食品小売業者が集積されている、いわゆるただの“市場”ですが、市民や観光客にとっては、この“市場”のほうが一般的ですね。

さてさて、本題に戻りまして、今回訪れた「ブランチ横浜南部市場」は、卸売市場法からみると説明しにくいので、少し端折って説明すると、昔は“卸売市場”であった場所を有効活用し、一般市民向けに“卸売市場”と商業施設をコラボレーションするという事業を、開設者であった横浜市が公募して大和リース株式会社が計画・運営している施設です。

「ブランチ横浜南部市場」には、場内事業者がいくつか出店して青果や鮮魚の小売をしていたり、Everyday Low Priceを掲げる横須賀発のスーパー「エイビイ」が出店していたり、パブリックスペースにはキッチン付きの貸しスペースがあり、料理教室が開催されていたりと、食に関してライブマーケット感を重要視したお店が並んでいます。

専門家的な目線でこの施設の魅力を挙げるとすると、「食の専門店街」と銘打たれた関連棟は、この横浜南部市場が“卸売市場”の頃から、市場に青果や水産物を買いに来た人向けに、関連商品(卵や漬物・乾物、菓子・お茶・梱包資材等)を販売していた店舗で、その店舗が「ブランチ横浜南部市場」のコンセプトに沿うように、一般消費者も対象にして卸問屋ならではのラインナップで商いをしている点です。

“卸売市場”の再整備において、元々卸売市場は業者向けの取引が目的の施設ではありますが、一般消費者を市場に取り込み、築地の場外市場のような“賑わい”を検討する自治体が増えてきています。この「ブランチ横浜南部市場」はその取組みとして先進事例であり、市場開放などイベントの連動を行うなど場内事業者との連携が取れていて、業界注目の事例なのです。

自治体としても、市民の税金を投入するので、業者向けだけでなく、市民にも直接的に還元できる場を、というのが卸売市場業界の風潮になりつつあります。

29日の午後、さすがの賑わいです。本日はおせちづくりのためのお買い物。

購入したのは、ブリ、いくら、数の子、酢だこ、ホタテ、はまぐり、練り物等々。その後、藤が丘の「やさいや金次郎」で、今年事業で携わった冬ウニと、ゴボウや白菜、果肉がゼリーみたいだと巷で話題の紅まどんなを買い込み、お店の売上にも貢献しつつ、いざおせちの仕込へ

片瀬家では、父方の実家が長野でおせちを大みそかに食べる風習があり、今から大みそかが楽しみです。ちなみに、おせちには「毎日家事にいそがしいお母さんたちが、せめてお正月の3日間ぐらいは料理をしなくてもいいように」という意味があるそうです。日頃の感謝の気持ちをこめて(ただ単に、作りたがり、魚捌きたがりなだけですが…)、我が家はおせちをつくるところから頑張らせてもらっています!

 

やっとこれで今まで経験したことのない一年が、終われる気がしてきました。東日本大震災の時も、地元で被災があり仕事も忙しい年で大変でしたが、今年はまた違った意味で精神的に疲れた一年でした。

コロナに振り回された年でありましたが、これが新たな生活様式となり、日常となっていくのでしょうか。一次産業に携わる中で、本当に大変な状況の生産者や事業者とも仕事をしてきましたが、やはり食の大切さ、一次産業が基幹産業でなくてはならない、止まってはいけない、止めてはいけない産業なんだということも切に感じた一年でもありました。

この経験を糧に、また来年、よい一年になるように頑張っていこうと思います。

それではよいお年をお過ごしくださいませ。


副主任研究員 片瀬冬樹