第14回 | 2017.10.10

地域のために稼ぐ、儲けるということ
~地域振興を自分ごととして取り組めるか~

地域振興において、所得や収入、財源はこれまで以上に非常に重要な要素となっている。少子高齢化や都市部への人口流入、核家族化など、社会的な変化を背景に、わかりやすい例としては、自治会の加入者の減少や役員・幹事等の担い手不足は大きな問題となっており、地域の自治振興において、自らの地域を自らの手で、というある意味「ボランティアの精神」(言葉で示すと語弊があるところもあると思うが)だけで成り立たせることが難しくなってきている。(昨今では、ボランティアにも有償、無償などと付けられることがあるが、ここでは自治会組織等を代表する無償のボランティアを指すこととする。)

私どものクライアントは多くが地方自治体で、地方自治体におけるお客様はその行政区域内の住民と言える。各メディアでは国の税収などに関する話題が取り上げられているが、その末端を担う地方自治体はより厳しい財政状況に直面しているところが大半であり、前述したような地域の実情がある一方で、地方自治体はお客様=住民に対して、「自分たちでできることは自分たちで行いましょう」といった基本スタンスで政策を進めざるを得ず、そこに大きなギャップが生じていると言える。

こうしたギャップを埋めるには、住民自身が、団体や組織であれば運営を担うための財源、個人であれば自分が動くための財源を確保するということを真剣に考えなければならない時代になっているということをまず認識していかなければならない。特に地方において、「稼ぐ」、「儲ける」なんて…と口にする住民の声も少なくないが、地域のためになるモノやサービスを販売・提供し、その利益を地域のために活用するのであれば、何ら気にするものではなく、ましてや恥じるものでもないのである。

私どもは以前から、地域における基本的な金の流れは2つに分けられると考えている。1つは、地域内の売り買いにより金がまわる「地域内循環」、もう1つは、地域外へ売りに出る「外貨獲得」である。当然、いずれの考え方も必要ではあるが、個人的には日常的な購買や集客においてみても、地域住民に必要とされ、定着するモノやサービスを販売・提供することをベースとすべきであり、「地域内循環」をベースとしながら「外貨獲得」も進めていくことが基本であると考える。

その中で今回は、「外貨獲得」における「ターゲット」について少し述べてみたい。「地域内循環」は言うまでもなく地域住民がターゲットとなるが、「外貨獲得」と言ってももう少し具体的にどういったターゲットに対してモノやサービスを販売・提供していけば良いのか。人口減少が避けられない社会情勢の中で、数の多さだけで考えれば、第一次ベビーブーム(1971~1974年)である団塊世代(現在68~70歳前後)のほか、その子ども(第二次ベビーブーム)である団塊ジュニア世代(1971~1974生まれ・現在43~46歳前後)が注目されるが、今後10年で考えれば、団塊世代は後期高齢者であり、団塊ジュニア世代はいよいよ高齢者に足を踏み入れることとなる。当然こうした高齢者をターゲットにすることも1つではあるが、他の見方にも注目すべきではないかと考える。

あくまで1つの指標であり、全国的な流れから述べるものであるため、地域の実情に応じて分析や再設定する余地はあるが、以下の数値を見てもらいたい。

注目したのは、団塊ジュニア世代の子どもである。団塊ジュニア世代の子どもは出生数こそベビーブームほど多くはないが、人口減少社会の中で、一定の人数を保っている世代である。(赤い点線枠)親である団塊ジュニア世代が仮に、第一子を28歳、第二子を30歳(共に該当者が25~30歳の1995年及び2000年の出生時の母の平均年齢)に生んだとすると、団塊ジュニア世代の子どもは、現在13~18歳(中高生)であり、10年後は23~28歳前後となる。

また、今後少なくとも若干数値は上昇すると想定されるが、夫の初婚平均年齢が31.1歳、妻が29.4歳、出生時の母の平均年齢は第一子が30.7歳、第二子が32.6歳といった最新の2016年数値に当てはめると、10~15年後にこの団塊ジュニア世代の子どもは、就職、結婚・出産を経て比較的小さな子どもを持つ世帯を構成していくこととなることに注目したい。

数の原理から高齢者に着目するという視点を否定する訳ではないものの、上記の例のように発信力があり、長期にわたって将来性のある世代をターゲットと据えるという考え方を併せ持つことも重要であると考える。ただし一方で、晩婚化に伴う単身世帯及び子ども無し夫婦の増加も顕著であるため、この点については今後の推移をしっかりと把握し、検証する必要はある。

ここでは利益を得る仕組みの入口として、ターゲット設定の一例を挙げたが、新たなモノやサービスを販売・提供し、利益を得る仕組みを作ることは容易にできるものではなく、何より一過性のものでなく定着させることに時間を要することは、これまで多くの地域に関わらせていただいた中で感じることの1つである。3年後に東京オリンピック・パラリンピックを控えるが、その後は全国的に人口減少、財政逼迫などの不安要素がより鮮明になってくることは間違いない。今後は地域が、地域の住民が、より一層自分ごととして、また、危機感を持って自らの地域の振興に取り組むことが必要であり、そのためにしっかりと活動する財源を自ら捻出していくという考え方を持ってもらいたい。無責任と言われるかもしれないが、手助けや指南など、私どもができることは限られる。限られた領域の中で、今後も私どもができることを、地域と、地域住民のみなさんと精一杯取り組んでいきたい。

 


主任研究員 有山 公崇