第37回 | 2020.09.14

サンマが食べたい
~水産資源の持続可能性について考える~

コロナ、コロナと騒いでいたら、夏休みに遠出することもなく、まだ残暑を感じるものの、あっという間に少しずつ秋らしい空気になってきましたね。

 

コロナでなければ夏休みは仙台の実家に帰る予定でしたが、その私の実家には、徒歩1分のところに、いわゆる“町のお魚屋さん”がありました。私が小学生の頃には店を閉めてしまったので、記憶的には数年しか通っていないのですが、そこの自家製イカの塩辛がとてつもなく美味しかったり、初夏にはホヤを母親が買ってきて、酢の物にしたり、ホヤごはんにして食べたものです。

余談ですが、ホヤごはん、私の人生的にはスタンダードなホヤの食べ方でしたが、昨年弊社でホヤに関する業務を行っている中で、そんな食べ方があるのか!と驚かれました。一度家で作って会社に持っていき食べてもらいましたが、半ば強引に美味しいと言わせた感(“これならホヤも食べられるね”、という前向きな意見)があって、もっともっとホヤの魅力を伝えていきたいと思っている今日この頃です。ちなみに、私のおふくろの味は、ホヤごはんと唐突に出てくるグリーンカレーです。

 

 

さて、本題に戻ります。秋になったので、サンマの季節になりましたが、今年は例年のように、スーパーの鮮魚売り場で氷詰めの発泡スチロールに並べられたサンマをお見かけしません。すでにニュースでも多く取り上げられていますが、今年は例年になく(毎年聞いている気がするが…)サンマが不漁で、水揚げ量が伸びていません。サンマの水揚げ量では日本有数の北海道根室市の花咲港では、例年だと1日当たり1,000トン以上のサンマが水揚げされるそうですが、最盛期の9月でも1日当たり数十トン、あるいは水揚げのない日もあるそうです。

 

豊洲市場では初競りで、平均卸値が7,000~8,000円/kg、1匹あたり1,500円を超す高値となりました。これはいわゆるご祝儀相場的なモノではなく、あまりにも需要と供給のバランスが崩れている証拠になっています。首都圏のスーパーでは、未だ生鮮のサンマは1匹300~500円を超すことも珍しくない状況です。しかも、日本近海でサンマが回遊していないため、公海まで漁に出る必要があり、必然と鮮度も落ちてしまう、という状況も発生しています。

 

不漁の要因としては、海水温の変化による回遊ルートの変化や、他国が公海で漁獲を増やしている影響などが指摘されていますが、果たして本当にそうでしょうか。

図 日本の調査船調査(表層トロール)から推定した海区別サンマの資源量

出典:水産研究・教育機構 国際漁業資源の現況

図のとおり、資源量の推移は右肩下がりで、調査開始の2003年から比較すると、2019年には30%弱まで落ち込んでいます。特に、日本近海を示す1区に限っては、2004年の200万トン程度をピークに2010年から激減しています。サンマは2年が寿命であるため、回遊ルートが変わらない限りは、その海域に2年続いてサンマの資源量が無ければ、その後回復することはないという、極端な見方もできなくないのです。

 

この資源量を守るべく、日本や中国、台湾など8カ国・地域が、サンマの資源管理を話し合う国際機関、北太平洋漁業委員会(NPFC)において、漁獲量の割り当てを行っています。ただし、公海とEEZにおける今年の漁獲可能量は約55万トンに設定されており、加盟国の2018年の漁獲量は43.9万トン、2019年に至っては19.5万トンと、そもそも漁獲量の制限の割り当てが機能していない状況です。

 

サンマに限らずクロマグロやカツオ、スルメイカ、サバなど近年資源量の激減が取り沙汰されている魚種も多く、これから資源管理という観点で、持続可能な水産資源を守るため、水産エコラベルへの取組みがますます重要になっていくでしょう。

水産エコラベルとは、簡単に言うと、“適正に資源管理された、持続可能な漁法と環境に配慮した漁業・養殖業に与える承認制度”です。具体的には、定置網の網目の大きさを調整して小さすぎる魚を逃がす、産卵期には禁漁をする、養殖魚の餌をトレーサビリティ(追跡可能)があり、違法な漁業でない、あるいは小魚を乱獲した飼料を使わない、などです。日本には主に上記に示す4つの認証制度の水産物が流通しています。それぞれ特徴や是非はありますが、それはまた後日。

 

 

魚にはそれぞれ旬がありますが、魚離れが進んでいるといわれる現代でも、旬を感じる魚と言ったら全世代共通で、サンマ(刀魚)が間違いなくトップでしょう(統計的に調べたわけではありませんが…)。サンマに限らず、美味しい魚を、いつでもいつまでも食べれる未来に。このような認証のある水産物を積極的に購入することで、持続可能な水産資源への取組みを広げていきませんか?


副主任研究員 片瀬冬樹