第4回 | 2017.05.08

こんな金次郎野菜が人気だ!
~直売所、道の駅での青果販売担当者様へ~

●金次郎野菜とは?
私、桂田が担当している青果販売事業では、神奈川の篤農家が自信、責任、志を持って生産する美味しい野菜、果物、米、卵、味噌など、多品目に及ぶ農産品を買い取り、販売させて頂いている。これらの特選農産品を、小田原が生んだ偉人、二宮金次郎の精神を具現する「金次郎野菜」と名付けており、常時金次郎野菜の取扱いがある販売店は9店舗になる(記事掲載時点)。販売開始から約3年半が経ち、私はそのうち直近の2年余りに携わっている。

生産者のこだわりや愛情を農産品と共に消費者に届ける事、美味しい野菜に出会った消費者の喜びや期待の声を生産者に届ける事、これがこの事業の、そして私の使命である。私はこの使命を果たす為の販売戦略の検討、情報伝達、受発注、生産者から消費者までの間を取り持つ配送や販売店の方々とのやり取りなどを担っている。

 

●こんな野菜が人気だ!
畑から売り場、集荷配送、店頭販促まで携わる中で、競合商品より幾分割高であっても飛ぶように売れていく野菜を目にする事がある。あるいは、然るべき売り方をする事で販売が安定する物もある。人気のある野菜、リピーターの付く野菜の特徴をお伝えする事で、直売所や道の駅での青果販売に多少なりともお力添えできれば幸いである。

・出荷時期を調整
金次郎野菜の基幹的販売店である横浜市の店舗は、主に群馬県と神奈川県の野菜を販売する直売所である。産地が群馬県と神奈川県に集中するため、春と秋の一時期が端境期になり野菜の出荷が不足、あるいは偏る事となる。このような性格の店舗で完売御礼の人気となっているのが、神奈川県南足柄市の生産者の極早生玉ねぎである。この玉ねぎは3月下旬から出荷を開始して頂いている。栽培方法等は弊社代表コラム「二の釼が斬る!」第296回でも取り上げている。神奈川県産として早い時期の出荷となったこの玉ねぎは消費者から大変ご好評を頂き、入荷当日に完売が相次ぐ売れ行きであった。同一県内でも地域それぞれの気候や複数品目の作型の組み合わせ方、生産者の技術によっても、収穫、出荷時期をずらす事の可否はあるだろう。しかしながら、直売所で特定品種の野菜の出荷が集中する場合は、検討に値すると思われる。生産者にとっても有利販売が可能となり、直売所にとっても陳列量の調整を図れる事となる。

・袋の選択
野菜を入れる袋にポリ袋(非防曇加工)の使用を禁止している直売所がある。ポリ袋だと、冬期であっても外気から常温の店内に搬入した途端に袋が曇る。夏期はなおさら、店舗に着く前に蒸し野菜状態になってしまう。防曇袋であれば運搬時、陳列時に袋内が曇る事がある程度防げ、中の野菜が傷みにくくなる。中身が見えやすくなり、消費者が商品を手に取る機会も増える。更に品目別の専用袋であれば鮮度保持の為には望ましいが、かけられるコストの範囲内で検討が必要である。直売所全体の品質向上の為にも、袋の統一基準を出荷者に働きかけていくと良いだろう。

・荷姿の配慮
里芋、さつま芋についての意見だが、同じ大きさの粒(芋)を揃える事が消費者や購買担当者に喜ばれる。これは粒の大きさによって調理用途が変わる事、また中身が揃って見える事で高級感が出る為である。また、中身が揃って見えるという点で、オクラなどは袋の口をバッグシーラーで止めるのではなく、折り返してテープで止める姿が好評だった。バッグシーラー止めだと袋の口が絞られてしまうが、折り返し止めだとオクラが横に整列し、商品のシルエットが四角になる。これもひと手間かけて高級感を演出するテクニックである。

・特徴的な品種の販売
昨冬12月から3月まで、2品種のキャベツを横浜市の直売所を中心に販売した。ひとつは一般的な品種のキャベツ(以下「一般品種」)、もうひとつは高糖度を売りにした品種(以下「高糖度品種」)である。高糖度品種は特に消費者のリピート購買が多く、販売終了後もたびたび再入荷を望む声を消費者から頂いた。下表は2品種の販売データの比較である。

【他産地品との売価差】
競合となる他産地のキャベツより、高糖度品種の売価を最大時約20%高く設定した。

【ロス率】
値引きロス率は一般品種で2.9%、高糖度品種で0.7%、高糖度品種は完売が続き、値下げ販売がほぼ不要であった。

【売上原価率】
一般品種に比べ、高糖度キャベツの売上原価率は2.1%低い。高糖度品種の売価を若干高く設定した為である。

このような特定品種の販売に向けては、作付販売計画を地域の核となる栽培技術の確かな生産者と共に練り上げていく必要があるだろう。キャベツのように誰もが使い道を知る野菜であれば、調理用途や味の違いを消費者へ説明しやすい。また売り場では販売開始時期に試食販売を行い、その後の販売に弾みを付けたいところである。

以上が、販売事業の担当者として私が気づいた点である。全国各地の直売所や道の駅での青果販売に少しでも役立てば、という思いから記した。私が次回記事を書く機会にも、青果流通、販売の現場から気づいた点を発信したい。


研究員 桂田 宙明