第10回 | 2017.08.15

かながわアグリビジネスステーションの取組みから見る地域内流通のポイント

 

弊社代表コラム「二の釼が斬る!」でも度々登場した、流通研究所が取り組む地域内流通システムを担う「かながわアグリビジネスステーション(略称:KABS)」は、今年の10月で販売を開始して丸4年となる。販売開始年から事業に携わらせて頂いているが、紆余曲折を経て、年々取扱額は拡大しており、平成28年度は前年度比141%と既存の販売先に力を入れた結果、大きく拡大することが出来た。現在は、登録生産者62名、小売販売が9件、卸売販売が3件、野菜ソムリエ7名という体制で、事業を展開している。(本コラム執筆時点)

本コラムではこれまでのKABSの様々な取組みを整理し、継続できなかった要因を「失敗に学ぶ地域内流通システムのポイント」としてまとめた。
また、後半には新しい事業展開の概要も記載しているので、首都圏での販売を小さく始めていきたいという産地の方には是非ご一読願いたい。

●失敗に学ぶ地域内流通システムのポイント
はじめに、かながわアグリビジネスステーションについて簡単に紹介しておく。
かなが  わアグリビジネスステーションの概要は、次の通りである。

KABSではこの4年間、小売事業を中心に、近隣商業施設での出張販売、宿泊施設への卸売販売、県内及び都内卸売業者への卸売販売、加工用原料としての菓子店への卸売販売 など、様々な取組みを行ってきた。現在展開している事業は、小売事業、県内卸売業者への卸売販売、加工用原料の卸売販売であり、その他の取組みは様々な理由により、現在は行っていない。ここでは、あまり語られることのない取組みを継続できなかった点について、その要因を分析してみたい。

 

継続できなかった理由は様々であるが、地域内流通システムは、物流の構築と生産者と実需者・消費者をつなぐ役割(中間)が非常に重要となる。KABSでは流通研究所がその役割を担っており、今後もトライアンドエラーを繰り返しながら前に進んでいきたい。

●KABSの新たな取組みのご紹介
次に、KABSの新たな取組みとして、いくつか検討しているもののうち、一つをご紹介したい。

現在、KABSの取扱品目は、全て相模川より西側のエリアの生産者から直接集荷した農産物・農産加工品である。そのため、どうしても端境期が出来てしまい、毎年8月、9月、10月前半、2月、3月、4月前半は商品の絶対量が不足しており、小売事業の強化には、ここのボトルネックを解消することが必要不可欠である。

そこで、新たな展開として、「金次郎セレクト」という「金次郎野菜」の派生ブランドの立ち上げを検討中である。

先行して、いくつかの産地に打診したところ、スタートするには課題があることが分かった。それらをクリアした暁には、現在、弊社が様々な形で関わらせて頂いている産地の皆さまへ、各担当者からお声がけさせて頂く予定である。また、現段階でもご興味がある方は、弊社販売事業担当者へご連絡頂ければと思う。

本コラムでは、これまでKABSで取り組んできた内容を中心に、地域の農産物を地域で消費する地産地消を推進するための地域内流通システムのポイントについて、私なりに整理した。紙面の都合上、すべてはお伝え出来なかったが、今回書けなかった内容も含め、次回のコラムでは、KABSの経過を報告できるようにしたい。

この地域内流通システムの仕組みは、神奈川県でも同様の動きが多数見受けられるし、全国的にも関心を持つ自治体が増えているように感じる。今回のコラムが地域内流通システムの導入を検討されている方々のヒントとなれば幸いである。

 


副主任研究員 上田 諭