第12回 | 2017.07.03

道の駅事業の推進に向けて⑥
~道の駅の地域住民の参加手法について考える~

道の駅は、指定管理者と地域住民が車の両輪のような役割を果たすことで、地域活性化という目的に向けて前進するものである。いかに優秀な民間事業者が指定管理を担っても、運営に住民が参加しない道の駅では、経済効果はあがらないし、活性化にも結びつかない。では、地域住民はどの分野で道の駅の運営に参加するのか。また、そのために市町村は、どのような仕組みをつくり、住民に働きかけていくべきなのか。この度は、道の駅シリーズの最終回として、道の駅の地域住民の参加手法について述べてみたい。

地域住民の参加手法の1つ目として、道の駅での雇用があげられる。道の駅は、有力な地域雇用の場となる。先進的な取組みで有名な、栃木県の道の駅「もてぎ」では、開設当初から地域雇用者100名を目標とし、昨年はこれを達成している。雇用形態やシフトの方法、道の駅の施設機能によって異なるが、「もてぎ」の例を参考にすると、年間売上高10億円を達成すれば100名の地域雇用を創出できることになる。地域住民が、地域の拠点施設で、地域活性化のために働くことの意義は大きい。そこで働く職員が地域を愛し、道の駅を愛することで、運営に活力を注ぎ込むことが出来る。

そのためには、雇用者への徹底した研修の実施と、出荷者などとの交流機会の拡大が必要である。研修では、単に販売業務の技術研修に留まらず、地域の産品や歴史・文化の習得など、地域のことをより深く知ってもらい、地域のコンシェルジェとして育成することが大切である。また、出荷者などとの交流を通し、相互理解を深めてもらうと共に、出荷者の思いや努力、産品ごとの特長などを知ってもらい、これを利用者に伝えるような人材に育てていく必要がある。そのような地域住民が、道の駅で働くことが、地域を大きく前進させるための原動力となる。

地域住民の参加手法の2つ目としては、道の駅への産品出荷があげられる。特に地域の農産物は、スーパーでは販売されていないオンリーワンの商品であり、道の駅の最大の魅力になる。地域住民を、産品の出荷者として道の駅の運営に参加させることにより、オリジンリティあふれる品揃えを実現できる。しかし、年間を通して消費者ニーズに対応した潤沢な農産物を出荷するためには、出荷者を増やし、出荷者個々の生産技術を高めて品質を向上させ、地域全体で計画的な生産・出荷体制をつくりあげることが課題になる。

この課題を解決するためには、出荷者の確保と組織化、研修会や検討会の開催などを通した育成が必要である。出荷者の確保と組織化にあたっては、販売農家はもとより、自給的農家や定年帰農者なども対象に、広く参加を呼びかけると共に、地域のリーダー達を頂点とした出荷組合、並びにその下部組織としての品目別部会(米、野菜、果樹、花卉など)を設立することが肝要である。その上で、組合員・部会員を対象とした、栽培技術や安全管理などにかかわる研修会や、新たな品種導入、出荷期間の長期化などをテーマとした研究会や実証試験などを繰り返し開催することが重要である。さらには、出荷のルールや心得など、こうした組織を通して出荷者に浸透させ、地域の団結力を高め、切磋琢磨する機運を醸成させたい。

出荷組合の活動の一環として、特産品開発も重要である。道の駅の物販施設における売上構成は、農産物などの生鮮品が約50%、加工品が約50%というのが一般的で、その地域でしか手に入らない特産加工品の品揃えは、利用者の拡大に大きく寄与する。そのためには、地域の商工業者や、加工業許可を持つ農家などが部会をつくり、地域食材を活用した新たな特産品づくりにチャレンジすることを目的とした検討会の開催や、試作や試験販売などを繰り返し実施することが効果的である。道の駅が、地域住民主体の農商工連携や6次産業化を進める拠点としての役割を果たすことで、地域経済効果はさらに高まることになる。

地域住民の参加手法の3つ目としては、道の駅で開催するイベントがあげられる。イベントの開催は、道の駅運営のマンネリ化を解消し、誘客効果を高める特効薬である。可能であれば、毎週末にでも開催したいところである。物理的に困難な場合でも、小規模なものでも構わないので、月に1度は開催するべきだろう。加えて、季節ごとに大規模なイベントを企画したい。イベントの内容は、季節の野菜の大量販売やフリーマーケット、コンサートやゲームイベントなど、地域の創意工夫を期待したい。

そのためには、地域の団体や企業によって構成する地域協議会のような緩やかな組織づくりが効果的である。JAやJF、商工会や森林組合はもとより、高校や大学、福祉施設、自治会、女性活動グループ、さらには金融機関など、幅広く参加を呼びかけ、年に1~2度程度の全ての団体が集まり、道の駅の状況や年間のイベント計画などを共有する場を設ける。その上で、各イベントの実施にあたっては、道の駅の事務局が、各団体との個別協議を行う。しかし、こうした地域住民参加型のイベントは、簡単にできそうで出来ない。出来ない理由は、企画・調整を担う人材の不足である。本来、こうした取組みは、道の駅の駅長が担うべきであり、駅長の人選が鍵となろう。

地域住民の参加手法の4つ目としては、地域情報の発信があげられる。いずれの道の駅においても、交通情報に加え地域情報の発信コーナーが設置されている。しかし、多くの道の駅の情報発信コーナーは、地域の観光スポットや歴史などのパネル展示に留まっており、そうした展示物が刷新されることなく、有効活用されていない事例が多い。本来、事業目的を踏まえると、地域情報の発信コーナーにおいては、地域住民の写真や絵画や生け花などの企画展や、地域のイベントや多様な活動の紹介や案内などを常時行っていく必要があろう。しかし、情報発信コーナーの運営に力を入れても売上には直結せず、人件費などの経費ばかりが嵩むことになる。

そこで、コーナーの利用や情報の収集・発信を担うボランティア団体を育成し、情報発信コーナーの企画・運営を担わせることを検討したい。道の駅の情報発信コーナーをボランティア団体の活動拠点とし、週末などは、コンシェルジェとして出て利用者への対応をしてもらってもよい。その場合、道の駅の指定管理者などが、その活動経費の一部を補てんし、業務を委託する方法も考えられる。地域には、地域の歴史・文化に造詣が深い方や、地域の活性化に寄与したいと考えるシルバー人材も多い。また、地元の高校や大学のサークルの活動拠点として利用してもらうことも検討の余地がある。

道の駅は、その地域にとっての宝である。地域住民に愛され親しまれ、共に築き、発展する道の駅をめざしたい。本日述べたような住民参加の仕組みづくりは、容易ではない。しかし、事業主体である市町村が、この困難な仕事を手掛けなければ、多額の予算の年月をかけて道の駅をつくる意味がないと言えよう。