第2回 | 2010.02.07

食の最新動向をつかめ! ~第2回フード・アクション・ニッポン アワード2010~

食料自給率向上を目的とした優秀な取組を表彰する「第2回フード・アクション・ニッポンアワード2010」の表彰式が、去る2月1日に有楽町のごはんミュージアムで開催された。ユニバーサルデザイン総合研究所の赤池学氏を審査委員長に私を含め9名の審査員が、応募総数2,509件の中から大賞、4つの部門別最優秀賞及び優秀賞40件を選定した。応募者は農業生産者・農業団体はもとより、外食店、食品流通業者、食品メーカーに加え、学校やマスコミなど多岐に渡った。受賞案件は、いずれも審査員一同自信をもって選定した取組であり、食料自給率向上を御旗とした明日の農業の指針を示す最新の先進事例であると言える。

大賞は、審査委員満場一致で三洋電機の「GOPAN(ゴパン)」が選定された。家庭で米粒からパンを手軽につくれるという画期的な商品である。11月の発売以来注文が殺到しており、現在は在庫がなく、今度買えるのは4月以降だそうである。都市部消費者はもとより、例えば「米をつくっているおばあちゃんが孫に自分の米でできたパンを食べさせたい」、あるいは「地域の外食店が地域の米を使った米粉パンをメニュー化したい」といった、多様な需要があるようだ。国民全ての米粉パンへの関心を高め、誰でも身近で米粉パンができるという普及性が高く評価された。

プロダクト部門の最優秀賞は、消費低迷が続く米飯市場の中で新たなブランド米を全国デビューさせた山形県の「つや姫」。知事を筆頭に地域一丸となった販売促進活動が功を奏し、ゴパン同様現在在庫切れの状態だ。製造・流通・システム部門の最優秀賞は、以前このコラムで取り上げた、国産100%の醤油・味噌・豆腐・漬物などを製造・普及している「ヤマキ」であった。生産者との連携により100年前の原料を100年前の製法でつくり100年後も同じ日本の食を提供したいという頑固な企業理念が評価された。コミュニケーション・啓発部門の最優秀賞は、全国的にも有名な高校生レストラン「まごの店」であった。卒業生の多くがプロの料理人へ、あるいは教育・福祉施設における食の伝道士として就業している。研究開発・新技術部門は、米100%で製造した新食感フライ用衣材を開発したニチレイフーズであった。私も試食したが、日本のパン粉が全て米に替わることも夢ではないような完成度の高さである。

それ以外でも日本の食の姿を変える素晴らしい取組が表彰されたが、流通改革という点で、私が特に注目した受賞者を挙げてみたい。

まずは、酒販店を核に買い物弱者などを対象に宅配ネットワークを拡大している「ファーミリーネットワークシステムズ」である。交流会では社長とお話する機会があったが、全国の酒販店を組織化する一方で、高齢者などを対象に1個単位の発注に対応できる商品の調達・配達システムをつくりあげている。また、農林水産物は出来る限り地域産のものを調達しているそうだ。昔の御用聞きを復活させることで、地域の生産者と酒屋そして高齢者とのコミュニケーションを再生させ、地域活性化に結びつく仕組みづくりを構築しつつある。同様の取組は、現在コンビニエンスストアでも、直売所などでも取り組まれており、機会を見て特集してみたいと思う。高齢化が進む中で買い物弱者に対応した新たな流通システムの構築は、流通業者などにとって共通の社会的使命となろう。

次に、社長の話も聞いて強い感銘を受けたのが、「スーパーを八百屋に戻そうプロジェクト」を進める「アップクオリティ」である。商品説明に加え調理方法などを実演販売することで、小売店の店頭を消費者への提案型の売場へ替えていこうとするものだ。スーパーが肥大化する中で、バイヤーの多くが見た目と価格でしか農産物を評価できなくなっており、これが日本の流通をゆがめている原因のひとつだと考えている。その中で、目利きができるバイヤーを育て、対面販売方式で農産物が持つ真の価値を消費者に伝えきるスーパーをつくっていこうという取組はまさに私が切望してきたものであり、今後も私なりに全面的に応援していきたいと思った。

そして嬉しかったのが、日頃より多岐に渡りお世話になっている、2年連続受賞となった「デリカフーズグループ」だ。デリカフーズは生産者・産地を育成して直接取引を行い外食店などを中心に、ホールとカットの両方の商品形態で納品する日本のトップクラスの仲卸業者である。今年の受賞内容は、新たな野菜評価基準である「デリカスコア」の活動である。外見だけでなく、栄養価や機能性、おいしさ、安全性などを正しく評価する基準をつくり、流通業者、医師、栄養士、研究者などに対して啓発活動を進め、国産野菜の消費拡大を狙いとするものだ。余談であるが、デリカフーズグループは全社員がとても素晴らしい。私のような者が訪問してもフロアにいる全社員が起立し元気よくあいさつしてくれる。自分達の社会的使命をはっきり持ち、産地も顧客もとても大切にする社員ばかりである。その常に変わらぬ姿勢には心から頭が下がるし、流研も大いに学ぶべき点であると考えている。

私は常々この国の農業のめざす姿は、「生産者・加工業者・流通業者・消費者がそれぞれ社会的義務を果たしながら、持続的発展が可能な共生型のフードシステムを創る」ことだと考えている。この度のFANアワードへの応募内容は、めざす姿に向けた具体策がぎっしり詰まった素晴らしいものばかりだった。理想を同じくする同士として、受賞者はもとより、2,500件を超えた応募者の方々の熱意と努力に心から敬意を表したい。FANに参加された皆さん、または賛同される皆さん、これからも、時代の荒波に負けぬよう、信じる道を曲げぬよう、共に手をとり日々力強く前進して行きましょう。