第256回 | 2015.10.19

頑張れJA! 主役はやはりJAだ ~ JA全国大会特集記事より ~

JAグループは去る10月15日、第27回JA全国大会を開催し、「創造的自己改革への挑戦」をテーマとした、2016年からの3か年計画の基本方針を決議した。「農業者所得の増大」、「農業生産の拡大」に「地域の活性化」を加えた3本柱を基本目標とし、各JAにおいて具体的な計画を作成し、実践することを確認した。

組合員の高齢化と農業者のJA離れが進む中で、国からは様々な改革案をつきつけられるなど、JAグループが置かれている環境は厳しい。平成22年のデータによれば、総合農協の共販率は野菜で57.7%、果実で56.1%であり、毎年微減傾向にある。しかし、依然として、JAグループが農産物流通の中核的役割を果たし、地域の農業振興と国民への食の安定供給を担っていることは事実だ。

これまでの多くのJAが自己改革に取り組み、革新的な事業にチャレンジして来たことは間違いないが、総じて取組みのスピードが鈍く、創意工夫や努力を怠ってきた面も否定できない。現在は、全中の解体が決定し、世論からの様々な中傷を受けて、「おしりに火が付いた」状態であるとも言えよう。この度のJA全国大会が、JAグループの大きな転機になることを心から期待したい。

全国農業新聞では、全国大会に先立ち、自己改革に取り組むJAの特集を組んでいた。JAがどのような視点で新たな経済事業にチャレンジしているのか、明快に整理された内容だったので、その中からいくつかを簡単に紹介してみたい。

全国有数のブロッコリーの産地であるJA香川県では、県内6か所で育苗を行い、JAの作業員が自動定植機を作った定植作業を受託している。集出荷施設では、生産者が持ち込んだブロッコリーを選別・調製し、出荷箱の氷詰めまで行う。JAが育苗・定植・出荷調製まで行うことで、生産者の労働力とコストは縮減される一方、市場での品質評価と信頼が高まっている。その結果、栽培面積は過去10年間で2倍以上に拡大し、今年度は900haを超える見込みである。効率的な共同事業をJA自ら行うことで、生産者の所得向上と販売力の強化につながることを証明する事例である。

滋賀県のJAこうかでは、たまねぎやキャベツなどの野菜の作付面積を5年間で2.3倍の約100haまで拡大している。このうち拡大分の6~7割は、JAの営農指導員で構成する「耕作隊」が米農家に野菜作への転嫁を勧めたものである。転作農家へは、定植機や収穫機などの農業機械の貸し出しや、定植や収穫などの作業受託など様々な支援策を講じてきた。また、JAこうかでは「商人隊」もつくり、有利販売先の開拓にも注力している。米価が低迷する中で、野菜などへの転換はどこの産地でも共通のテーマであるが、JAが先陣を切って生産者を引っ張っていく意義を強く感じる事例である。

千葉県のJAちばみどりでは、需要が高まる加工業務用に対応した産地づくりに力を入れている。約10年前に発足した「海上加工用寒玉キャベツ研究会」を中心に、4月~6月に収穫する春キャベツの大半を、契約栽培方式で全農ちばのルートを活用して出荷している。消費者の消費形態の変化に伴い主要野菜の加工業務用途の割合は、56%まで上昇し、市販用途を大きく上回っている。特にキャベツは、カット野菜市場の拡大に伴い引き合いが強い。従来JAは、市販用向けの市場出荷一辺倒の傾向が強かったが、今後はJAを主体とした加工業務用取引も拡大していくことを示唆する事例である。

JA三重中央は、自らカット野菜工場を運営しており、年間100品目を上回る商品を製造している。現在77名の出荷グループを組織しており、キャベツ、だいこん、はくさい、にんじんなどを契約栽培する体制をつくりあげている。カット野菜工場の取引量は9年間で4倍に拡大し、出荷グループが生産する野菜の使用料も全体の36%まで上昇した。取引価格の安定化、出荷規格の簡素化、資材コストの削減などにより、生産者所得の向上に結び付けている。JA自らが6次産業化に取組むことで、産地全体の活性化を実現している事例として評価できる。

JAとは組合員のための組織であり、共同の利益を追求する事業体である。それゆえ、固定概念から抜け出せず、昔ながらの事業領域や事業手法に固執する傾向が強い。これらの取組み事例を見ると、固定概念から脱却し、「従来ならJAがやらなかったことをやっている」といえよう。これがJAの自己改革に向けて、最も重要なキーワードではないかと考える。従来ならやらなかったことをやるためには、強い意志が求められるし、様々な障壁を乗り越える勇気も必要である。社会情勢は刻々と変化している中で、昔ながらの考え方・やり方を踏襲していては、時代に流れに乗り遅れ、社会的な存立意義をなくすことになる。

JAの正組合員数は年々減少しているのもの、野菜、果実などの取扱高に大きな落ち込みはない。組合員の大規模化は進んでいるし、今後も進むことは間違いない。つまり、これまで言われてきたように、JAは非力な小規模農家のための組織ではなく、段階的に中規模、さらには大規模農家中心の組織への転換が迫られることになる。一方、生産者の規模が拡大して法人化すると、JA離れをする傾向が強い。JAは経営規模に関係なく、全ての正組合員が平等の議決権を持つことから、その必要性は認識していても、少数の大規模農家に重点をおいた事業展開は行いにくいという内部矛盾がある。これが株式会社との決定的な違いであり、JAという組織の発展の足かせになっている。

自己改革のためには、JA職員の意識改革はもとより、組合員の意識改革が重要である。組合員と共に繰り返し協議し、「平等から公平へ」という基本方針を組合員に植え付けていく必要がある。その上で、経営規模などに合わせた階層別の事業展開や、新たな販路開拓や戦略作物導入など目的別事業展開を打ち出していく必要があろう。私は、ここがJAの自己改革のキモだと考える。

次に、組合員の共同の利益を追求できることを前提に、JA香川県のように育苗・定植・出荷調製まで行うなど、JA自ら作物の生産と販売に積極的に携わっていく姿勢が重要である。これまでのように、単に組合員がつくったものを販売したり、必要な資材を組合員に売ったりする事業内容を見ると、JAは組合員を気軽なお客さんと捉えてきた感が強い。組合員は、単なるお客さんではなく、同じ目的を持った同士でありパートナーであるという意識を強く持つべきである。そしてその上で、一緒に戦略を打ち立て、JAと組合員の役割分担のもと実践していくという考えが必要である。

企業との連携、新たな販路開拓、ブランド化、地域を守る農業生産法人の設立など、時代の変化に伴いJAがなすべきことはたくさんある。地域の農業振興の主役は、やはりJAである。是非、今を時代の転機と捉え、自己改革を実現し、新たな事業展開にチャレンジして頂きたい。