第132回 | 2013.02.18

集落営農組織を立ち上げよう! ~100年経っても地域を守る担い手をつくれ~

前回のコラムでは、「人・農地プラン」の策定をきっかけに、地域農業を再生しようと言う提案をした。今回は、その流れを受け、わが村の現状・課題を踏まえつつ、地域の中核的な担い手となる集落営農組織の具体的な設立手法を考えてみたい。

わが村では有名無実化してしまったものの、生産組合の単位で、40歳代・50歳代の若手の兼業農家が一人ぐらいはいる。今後、彼らが60歳の定年を迎えると専業農家になり、地域の中核的な担い手へ成長して行くことになる。農家の高齢化と離農が進む中で、必然的に彼らへの農地集積が進んでいくだろう。

しかし、ここで問題になるのが機械の更新である。わが村では現在、キヌヒカリやさとじまんの品種に限定していることから、田植え・収穫の時期が一定期間に集中する。また、基盤整備が立ち遅れており、ほ場規模は小さく作業効率が悪いことから、3町歩程度の耕作が限界であると考えられる。この生産規模での売上が約300万円であるのに対し、機械などをフル装備するためには700万円程かかるだろう。60歳を超え、残る人生が見えてきた年齢で、これだけの投資をするのはばくちに近い。

このように、地域の担い手として期待されている定年帰農者は、大きな投資ができないこと、体力的に限界があること、さらに自分の後継者が定まらないことなどの理由で、本格的な規模拡大には踏み切れないケースが多い。そこで浮上するのが、機械・施設及び労働力を共有し、次世代に引き継ぐ営農の仕組みづくりを目的とした集落営農組織の設立である。

この組織は農地を保有できる生産法人格を持ち、地域での農地の受け皿となる。当面、農作業の受託、利用権設定を前提とした農地の借り上げにより、農地を集積し、稲作経営の規模を段階的に拡大して行く。一方、裏作として、たまねぎ、なばな、レタス等の生産にチャレンジすることに加え、減反ほ場などを利用して、直売用の野菜栽培にも取組み、周年を通した営農体系を確立する。また、米の品種構成などについても研究し、田植え・収穫時期の長期化を図り、労働力を分散して投下できるような作型も導入する。

販売面においては、幸い神奈川県での需要は引く手あまたなので、営業担当者を決めて随時販路開拓に取り組めばよい。さらに、将来的には、加工事業や交流事業などの6次産業化の展開を考えてもよい。

当然この組織では随時人材を受け入れる。定年帰農する者には声を掛け、構成員を増やして行き、非農家であっても農業に関心がある者は、従業員として雇用してもよい。また、事業規模が拡大すれば、新規就農者を受け入れることも夢ではない。

さて、ここまでは誰もが考えることである。問題は、誰がどのようにこの組織を立ち上げるのかである。一つ目のポイントは、はじめから集落全体で進めるというよりも、考えを共有化できる有志3~5人でひざ詰めの話し合いをして、とっとと組織をつくってしまうことだ。多くの農家を巻き込むことは理想であるが、声を掛ける農家が多いほど、話がまとまらず、そのうち反対派や批判する者が出てきて空中分解してしまう。特に小田原市は、戦国時代に「小田原評定」と言う言葉が出来たように、皆口達者であるが理屈ばかりをこねて何一つ決められない土地柄でもある。まずは小さな組織をつくり、実績を重ねて行けば、必然的に参加者は増えて行く。

次に、組織形態である。事業・活動の持続性を考えると、法人格組織にすることが絶対条件であると思う。仲良しクラブやボランティア的な組織は、所詮長続きはしない。経済行為があってはじめて、人が集まり、次世代に引き継ぐ仕組みができる。組織形態は、農事組合法人か株式会社かのどちらかがよい。農事組合法人は、地域に聞こえがいい、JAの組合員になれるなどのメリットがあるが、原則農家しか出資できない。株式会社は逆に、非農家も出資でき、自由な経営ができるが、JAの組合員にはなれず(準組合員は可)、地域への聞こえも悪いなどの特徴がある。

個人的には、時代性を踏まえ、株式会社にすることが望ましいと考える。農家だけの組織は、やはり考えが偏り知恵も回らない。様々な経験・ノウハウを持つ地域の非農家や、将来的には企画・販売などを担う企業も仲間に入れると言う発想を持ちたい。資本金は、多ければ多いほどよいが、当面10町歩規模であれば、設立費用を含めて200万円ぐらいあれば何とかなる。発起人となる者がそれぞれ30万円ずつ、農地の出し手の地域の高齢者達から3万円ずつ集めるようなイメージでどうだろうか。その原資は、農地集積協力金(30万円/戸)を活用すればよい。

この際、この組織を「人・農地プラン」に、地域の中心となる担い手として位置づけてもらうことは非常に重要である。プランに位置づける農業法人を設立するとなれば、自動的に認定農業者となることから、スーパーL資金も活用できるし、各種の補助金を活用できる可能性も高まる。400万円のコンバインを一人の農家が買うのは大変であるが、2分の1補助を受け、無担保・無保証人・無利息の融資を活用できる組織なら、購入も比較的容易である。

こうした組織を設立するにあたっては、様々な不安もあるし、外野の声もうるさい。したがって、不退転の決意と実行力を持ったリーダーが必要不可欠である。また、そのリーダーは、地域で顔が知られている名士である必要がある。幸い私の村には、組織設立という大任を果たせるリーダーがいる。

高齢化が進み、このままだと耕作放棄地が今後急速に拡大することが明らかになった昨今、100年経っても地域を守る担い手となる組織の設立は急務である。私もメンバーの一員として、また流通研究所の代表として、この組織を設立することが社会的使命と考え、取り組んでいく決意である。