第182回 | 2014.03.31

進化する道の駅と将来展望 ~地域内発型産業の創出拠点をめざせ!~

今年も、ある地域で道の駅の整備に関する仕事をさせて頂いている。これまで私は全国で20箇所近く道の駅の立ち上げに携わっており、道の駅についてはこのコラムでも何度か掲載してきた。最近、時代の流れとともに、道の駅に求められる社会的ニーズが変わりつつあり、道の駅が担う役割や発揮すべき機能が高度化してきたことを実感している。

私がこの仕事を始めた頃の道の駅は、かなり単純なモデルであった。ドライバーの利便性向上のために、24時間利用可能な駐車場・トイレ・休憩施設を整備する一方で、特産品などの販路や地域雇用の場として、直売所とレストランを併設するというモデルである。この基本形に加え、その後、公園、体験施設、温浴施設、あるいは宿泊施設などを付加する事例が増加し、より集客力が高い道の駅、より経済効果を期待できる道の駅へと発展してきたと言えよう。

道の駅は、国が保証する安全・安心のブランドであり、言わば金看板だ。道の駅という表示があるだけでドライバーは安心して立ち寄るし、地域住民にとっても誇りに思う拠点施設であろう。ビジネスモデルとしても実に優れており、多くの道の駅が地域活性化に貢献し、健全な運営を実現している。その結果、全国の道の駅は1,000箇所を超え、未だに道の駅を新設する動きは止まらない。

最近では、防災設備や備品を完備し避難所としても活用できる防災拠点としての機能、コンビニやコミュニティ施設などを併設した生活福祉拠点としての機能、あるいは美術感や博物館などを一体的に整備した文化振興拠点としての機能を持つなど、道の駅は様々な進化を遂げている。しかし、私が最も重視する機能は、地域内発型の産業創出拠点としての機能だ。特に過疎化・高齢化が進む地域にあっては、既存産業の活性化を図ることに加え、新たな産業を生み出すような道の駅とする必要がある。

防災も福祉も文化も大切である。しかし、そうした社会性を考える前に、道の駅という金看板で集客し、それらの利用者を対象に外貨を獲得できる仕組み、地域雇用を生み出す仕組みづくりが重要である。道の駅は、地域活性化の拠点であると言う定義は誰も否定しないだろう。ただし、「地域活性化」はあいまいな言葉で、その捉え方は人によって異なる。広義では、福祉も地域活性化の一つと捉えられるが、私も流通研究所も、地域活性化とは経済活動の活性化に他ならないと捉えている。地域住民にサービスを提供するのではなく、地域住民がわくわくしながら、持続的・発展的に金儲けが出来る仕組みを創ることが地域活性化であると考える。

では、地域内発型の産業創出拠点とするためにはどうしたらよいか。その答えは、地域によって様々であり、かつ非常に奥深く、このコラムで語りつくせるようなことではない。その上で、「第2の公共施設の設立」、「6次産業化によるマーケットの創造」の2つの視点から、私の考えを簡単に述べてみたい。

公設民営方式をとる道の駅は、施設の管理・運営を委ねる者を決めるための指定管理者制度を導入することになる。この制度のもと、指定管理者の選定にあたっては、ノウハウ・実績を持つ企業を全国公募する方式と、地域密着などの優位性を持った企業・団体を随意契約で指名する方式がある。前者の方式は、最も優れていると判断した企業に安心して管理・運営を任せられるというメリットはあるが、企業の利益が重視されるため必ずしも行政の思惑に沿った運営は期待できない。一方、後者の典型的な組織は第3セクターであり、経営リスクはあるものの、施設の整備目的達成に向けた運営の道筋は描ける。地域内発型の産業創出拠点にするためには、勇気を持って後者の方式を選択するべきだと言うのが私の持論である。

市町村は、商売は出来ない。しかし、地域内発型の産業を創出するためには、仕組みを創るだけでなく、一定の経済活動を自ら実践することも求められる。しかし、第3セクターなら商売が出来る。つまり、第3セクターは、行政が出来ない仕事を補完する「第2の公共組織」だと言える。第3セクターは、自ら直売・加工・飲食事業などを実践し、地域住民を雇用・育成する仕事を担うことで、地域に産業を生み出すエンジンとなる。農地法の改正により、第3セクターが農地を借り上げ、自ら必要な農産物を計画的に生産することだって出来る。

次に6次産業化とマーケット創造である。そのポイントの一つが、無償のサービスを提供する施設ではなく、儲ける施設をどれだけつくるかにある。研修室や交流スペースなども必要であるが、収益を生み出さない施設を多く作っても、産業創出にはつながりにくい。直売・飲食はもとより、道の駅でニーズが高い弁当・惣菜やパン類などの製造・直売など、6次産業化の推進に向けた施設を出来るだけ多く併設することが重要である。また、コンビニエンスストアを第3セクターで直営し、そこで加工した商品を24時間販売するといった考え方も検討の余地がある。

道の駅の場合、ドライバーが最大の利用者になるであろうが、新たな利用者層の確保も必要である。例えば、交流人口を増やしたいのであれば、必要に応じて宿泊施設を整備・運営してもよいだろうし、女性を呼び込みたいのであれば、おしゃれな喫茶店を整備し、スイーツなどを提供するといった手法も考えられる。さらにファミリー層をターゲットにするのであれば、子どもの遊具なども必要であろう。新たな利用者層を取り組むための商品・サービスを提供することが、マーケットの創造につながる。

道の駅と言う集客力を持った金看板を活用したビジネスは、まだまだあるだろう。こうしたビジネス創造のための仕掛けをどんどん道の駅に注入することが、地域内発型の産業創出につながり、経済活動による地域活性化を実現させることになると考える。