第135回 | 2013.03.11

農家のブランド化に向けた最先端の取組 ~オイシックス N-1サミット2013より~

去る3月6日、オイシックスが主催する「N-1サミット2013農家・オブザイヤー2013」に出席した。実は、私は、ヤフーの宮坂社長などと一緒に、この「N-1サミット2013」の実行委員を務めている。時間の関係で、表彰式にしか参加できなかったが、やはりオイシックスはすごいと実感した。

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オイシックスは、ネット販売を基本に、消費者と全国の篤農家をつなぐビジネスモデルをつくりあげている。詳細については、第106回のコラムを参考にして頂きたい。「N-1サミット2013」は、今後の農業界を担っていく優良農業者たちが集い、学び、考え、そして讃えあう場を提供することを目的に、毎年3月に開催している。優良農業者同士が最先端の情報を共有することでスキルアップを図り、農業界をより明るい方向へ切り開いていくことを狙いとしたもので、農林水産省、経済産業省も後援している。

第1部は「高品質安定生産の土づくり」や「施設園芸・植物工場の成果と将来の見通し」など5つのテーマによる分化会が行われた。第2部は、「日本の農業が成長産業となるための、『攻め』と『守り』の戦略とは」と言うテーマでパネルディスカッションが開催された。パネリストは、「農業経営者」副編集長の浅川芳裕、「サラダボウル」代表取締役の田中進氏など豪華メンバーで、高島代表の話によれば、ちゃぶ台をひっくり返すような熱い議論が繰り広げられたらしい。

そして第3部は、「農家・オブザイヤー」の表彰式である。オイシックスに出荷する1,000軒を超える農家の中から、第9回目となる今年は123名がノミネートされ、部門賞に加え、銅賞、銀賞、最高金賞が選ばれる。この賞は、経営や農業技術などの視点で決定する既存の賞とは異なり、購入者の「おいしい」と言う声を評価基準とした独自の指標で生産者を表彰する制度である。つまりいかに消費者に支持されたか、どれだけ売れたかなどが重要な評価基準となる。

過去には、「甘っこ野菜」の三竹さん、「ピーチかぶ」の田中さんがそれぞれ2年連続の金賞を受賞している。今年の銅賞は、「甘さ凝縮ピクシータンジェリン(カルフォルニア産柑橘)のジム・チャーチル氏(米国)、銀賞が「みつトマト」の伊原務氏(千葉県)、そして金賞が「とろける口どけ生キャラメルいも」の飯尾薩尾氏(鹿児島県)であった。伊原氏は昨年金賞を受賞しており、2年連続を逃したことについて表彰台で悔しさをにじませた。飯尾氏は、オイシックスと取引してまだ3年目であるが、今年度ネーミングを変更したところ、爆破的な支持を受けて受賞に至ったと言う。

オイシックスのビジネスモデルで卓越しているところは、生産者と消費者の距離を徹底的に縮めているところにある。毎月顧客に送付される「VOICE」という情報誌は、毎回、ひとりの生産者の特集を組むかたちで編集している。農業にかける思い、栽培上のこだわり、品種の特徴、調理例などを写真入りでまとめたものだ。寡黙に日々農業に打ち込んでいる生産者にとっては、これほど嬉しい仕組みはない。一方消費者にとっては、農業や農産物への理解を進めるための、最高のツールだ。
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「農家・オブザイヤー」は、消費者が、生産者が作った農産物を直接評価する仕組みである。生産者は、その評価を受けて、さらに生産意欲を高めることができる。「おいしい」と言ってもらえることが、何よりの生産者のモチベーションアップにつながる。消費者にもっと「おいしい」と言ってもらうため、生産者はさらに生産技術の向上に取り組み、日々努力を重ねていく。まさにもの作りの原点を、「農家・オブザイヤー」に見ることができる。

未だに価格低迷から抜けきれない経済環境にある中で、オイシックスが販売する農産物の価格は高い。しかし、その価格に見合うだけの価値を消費者に提供しているのがオイシックスである。その価値とは、「おいしさ」を基本とし、おいしいもの作りにかける生産者の思い、こだわり、技術、プライドなど全てを包括するものであると言える。農産物が持つ価値を消費者に伝えきる仕組みが、オイシックスのビジネスモデルの骨格であると言える。

私は、オイシックスの発展に向けて、今後も応援していきたい。そして、オイシックスの仕組みや理念をしっかり学び、日々のコンサルティング事業や、KABSなどの新規事業に活かして行きたい。