第177回 | 2014.02.18

第3セクターは地域活性化に必要だ! ~世論に惑わされず本筋を見極めろ~

先日の読売新聞の第1面に、「3セク395法人清算困難」と言う見出しで、第3セクターダメ出し論的な記事が掲載された。またこの手の話かとうんざりしたが、これでさらに地方自治体が正しいことをやれなくなる風潮が高まるなと、心底落胆した。この記事を読んで、「第3セクターは赤字で地域の負の遺産になる。だから絶対作ってはだめだし、今ある3セクも早急に清算せよ。」などど無知な議員が議会でまくし立てる姿が目に浮かぶようだ。

記事は、全国の第3セクターや地方公社1928法人のうち、約2割にあたる395法人が、清算も困難なほど経営が悪化しているというものだ。自治体が3セクを整理・廃止する際、資金調達のために認められてきた「第3セクター等改革推進債(3セク債)」の対象から外れる見通しになったため、政府が新たな対策に入ったと報じている。3セク債とは、3セクの処理のために金利の半分を政府が負担するなどの特例を盛り込んだ債権であり、これまで土地開発公社などを中心に168件の発行が許可されてきた。4月以降は3セク債が発行できなくなるため、自治体が自力で3セクの抜本的改革に取り組むことになる。

この記事では、問題になっている395法人の内訳が記されていない。想像であるが、その大半は、公共事業用地を取得し運用することを目的に設立された土地開発公社なのではないかと思う。いわゆる塩漬けの公共用地は全国に多く存在するが、既に土地余りの感がある現在、企業誘致や新たな開発は困難であろう。バブル崩壊後、たくさんの不動産業者が倒産したことに似たものと言えよう。その他には、マスコミでも頻繁に取りざたされてきた大型観光事業を行う3セクなどが、清算も出来ない法人になっているものと考えられるが、その数は10~20社程度と少ないのではないかと想像する。

第3セクターとは、地方自治体と民間の団体・企業が共同で設立し、公益性と収益性を併せ持った事業を行う法人のことを言う。わかりやすい事例を言うと、市町村合併が進む前の道の駅の運営主体のほとんどが第3セクターだ。建物は主として市町村が整備し、市町村に加え地域の農協・漁協・商工団体などが出資して株式会社をつくり、施設の管理・運営に当たらせると言う地域活性化モデルが存在した。道の駅は、物販・飲食などの収益事業を行う一方で、休憩や情報発信、地域活性化全般に渡る公益的機能を発揮する施設であり、第3セクターが最適な管理・運営主体であったと言える。

しかし、第3セクター運営では、お役所仕事体質が抜けず、経営努力を怠り、当初目論んだ成果をあげられず、赤字を積み増すような事例が多かったことも事実である。こうした反省から、公共施設の管理運営者を公募で決める指定管理者制度が導入された。この制度により、高度な経営ノウハウと実績を持つ民間企業が、第3セクターに代り公共施設の管理・運営主体になる事例も増加している。民間企業の手によっても黒字運営が困難な施設は多く存在し、そうした施設は逆に高い委託料を支払わなければ、引き受け手が存在しないなど、この制度にもいくつかの問題が存在する。

人口減少社会に突入した中で、中山間地域や半島地域での過疎化・高齢化は急速に進んでおり、経済活動の停滞は著しい。こうした地域では、小中学校がどんどん廃校になり、代わって高齢者施設・福祉施設などが新設されている。仕方がないこととは言え、そんな地域に若者は未来を描けないだろう。山間地のある行政マンが、「過疎化が著しいうちのような町は、何もするなと言うのか。」と、以前私に語ったことが印象に残っている。民間活力の低下に歯止めがかからない以上、行政が主体となって産業を興し、雇用の場を確保しなければならない。その目的達成のために、中核的な役割を担う第3セクターの運営が赤字だってかまわないだろうと。

自治体によって多少差があるが、係長クラスともなれば、行政職員一人あたりの人件費は、福利厚生費などを含めると年間600~700万円はかかっているはずだ。これは自治体にとって全て経費である。一方、第3セクター運営の道の駅で、地域農産物などが3億円売れ、地域住民を15名雇い、加えて道路利用者の利便性の向上につながっているとしたら、1,000万円や2,000万円の赤字を自治体が補填しても、安いものだと考えられないだろうか。職員1~2名で、新たな産業を創造し、地域雇用を生み出すことは、到底不可能である。こうした第3セクターは、行政機能を補完する第2の公共であり、赤字だ黒字だだけでその価値を判断することは出来ない。

自治体への風あたりが強い昨今、地域の団体・企業、あるいは有志などにより、民間100%出資の会社をつくり、非公募の指定管理者に据えたいところである。しかし、過疎地域の多くは、民間サイドにそうした資本もなければ人材もなく、意欲さえない。また、市町村合併をしてしまった新市では、活力が低下する地域に新たな投資を行い、ましてや運営まで行政が面倒を見るとなると、なかなか庁内での合意は得られないだろう。

今年も私は、東北大震災の被害を受けた町で、道の駅を整備するための計画作りを支援している。震災復興支援により、施設を整備するめどはついているが、施設の運営については白紙の状況である。地域を見回しても、施設の運営を担えるような民間団体や企業は存在しないし、リーダーとなれる人材もいない。今後の検討課題となるが、道の駅の管理・運営主体は、指定管理者のもと民間企業を全国公募するのか、町100%出資の第3セクターを設立するのか、どちらかしかないと考えている。面前道路の交通量は多いことから、手をあげる民間企業も存在すると考えられるが、その場合、新たな特産品開発や地域女性の活用などの町の目論見は軽視され、単なるドライブインとなる可能性は否定できない。

第3セクターは、地域活性化に必要な組織である。問題は、その組織のあり方であろう。先ずは、公益的な側面を踏まえた設立目的、狙うべき効果を明らかにすると共に、経営リスクが少ない施設の利活用計画、事業計画を立てていく。現場のトップは全国公募などによりしかるべき人材を確保する一方で、視察研修・実践研修を重ね従業員教育を徹底する。関連団体、出店者、出荷者などど納得がいくまで協議する。こうした準備を徹底的に進めることで、民間企業に負けない経営体、民間企業では出来ない地場密着型の事業展開が可能になると信じている。全国の首長、行政マン、議員には、世論に惑わされず本筋を見極めた英断を期待したい。