第44回 | 2011.04.18

深刻化する風評被害と今後の対策②  ~支援に立ち上がれ、全国の直売所!~

前回に続き、風評被害などに苦しむ産地を支援するための具体策について考えてみたい。

前回紹介したように、既に様々な企業・団体が支援に立ち上がっている。最近では、宅配大手の「オイシックス」が、風評被害を受けている産地の産品を積極的に取り扱っている記事が目を引いた。「オイシックス」が独自に放射能物質の測定器を導入し、安全性を検査した上で、産地・品目を絞り込んで販売する取組であり、自ら安全性を証明し顧客に支援を呼びかける姿勢を高く評価したい。

一方、期待していたスーパーの取組には、若干疑問が湧いてきた。販売価格があまりに安いケースが見られるからだ。以前、福島産のかきなが市場で1箱1円で落札された折、ビートたけしさんがテレビ番組で、「1円で買ったやつは、その後誰にどのように売っているのか」とコメントしていたことを思い出した。スーパーが支援という大義名分を掲げつつ、値が付かない農産物や加工品をただ同然で仕入れて安値で売っているとしたら、これは国民に対する背信行為だ。捨てるよりは良いだろうという言い訳はあまりに悲しい。スーパーは市場での買参権を持っているのだから、先ずは市場において高値で落札すべきだ。もしくは、ただ同然で仕入れたら適正価格で売って、その差額は被災地への義援金に回すことが支援のあり方ではないのか。実態把握が不十分なので、これ以上のコメントは控えるが、こうした状況下での姿勢や行動を通して企業・団体の真価を見極めて行きたい。

そんなことを考えていた先日、JA西印旛の販売担当部長から、昨年春にオープンした大型直売所で福島産などの産品を扱うことで、風評被害を受けている産地を支援できないものかという相談の電話を頂いた。早速、福島県のJAあいづのファーマーズマーケット「まんま~じゃ」、JAすかがわ岩瀬の「はたけんぼ」、茨城県のJAかしまなだの「なだろう」の担当者に声を掛けさせて頂いた。

これまでJA西印旛とは、直売施設の立ち上げや地域農業振興などの仕事をさせて頂いている。JA管内においても、用水の破損などいくつかの震災被害を受けたが、幸い致命的なダメージは免れたようだ。この直売所は、現在でも都市開発と人口増加が進む千葉ニュータウンの街中にあり、豊富な商圏人口と良質な消費者を抱える。ひと度支援の御旗を掲げれば、多くの顧客がこれに応じることだろう。

一方、声を掛けさせて頂いた直売所は、いずれも流研が農林水産省の補助事業である地産地消・直売活動推進事業を実施した際に、丸の内オアゾでのイベントに協力頂いたところである。この事業は、全国直売所の実態把握と直売所間の連携のあり方を調査・研究したものであり、流研に全国の多様な直売所ネットワークが出来たにも係らず、その成果を十分活かしきれていないという反省があった。小さな取組であるが、多少は社会に貢献できたのではないかと感じた。

また、4月15日の農業新聞には、島根・JAいわみ中央が、直売施設を核に震災復興に向けたキャンペーンを実施する記事が掲載されていた。島根県江津市の道の駅「サンピコごうつ」に、「がんばろう日本今できることから始めよう~東日本大震災復興支援コーナー」を設置する。茨城県と福島県を中心に、東日本のJAから集めた商品を集中的に販売するという。現在、物流面での混雑で荷が集まりにくい状況だが、4月下旬からは長期的にコーナーを開設し、息の長い支援を続けて行くという。

直売所は市場流通とは異なり、風評被害に左右されない適切な価格をつけられる。取引形態は、受け手による買取販売となるだろうが、相対による交渉で条件が設定されることから、市場流通とは異なり1箱1円の価格がつくことはない。受け手の直売所は出し手の直売所の考え方を知っているし、連携をする上での調整もしやすい。特にJA同士であれば、トレーサビリティなど産品の安全性も担保出来るし、出し手の集出荷場から直接産品を配送してもらうことで、安定的な取引も期待できると思う。

また、農産物直売所を利用する消費者は、農業・農村に対する意識が高いことから、こうした消費者に風評被害を受けている産地の農産物を直接PRできるメリットも大きい。首都圏や西日本の直売施設と被災地の直売所が連携することで、全国の直売所ファンの間に支援の輪を広げて行くことが可能であろう。

さらに、直売施設間の連携では、農産物だけでなく、加工品の取扱も有望である。被災地で開発した特産品を全国にPR・販売することで、商品の認知向上やブランド化の一助になればよいと思う。JAあいづのファーマーズマーケット「まんま~じゃ」からは、すぐに出荷できる商品リストを頂いた。特産農産物であるアスパラガスや生しいたけに加え、米粉入りラーメンや手作りせんべい、アスパラ入りのパスタやスープ、ドレッシングなどもあった。

産地にとって直売所の魅力は、生産者が精魂込めてつくった産品を、生産者が再生産可能な価格で、消費者に直接販売できることにある。一方、消費者の魅力は、産地・生産者の顔が見える安全で鮮度の良い産品を購入できることにある。直売所間の連携を通して、被災地の生産者と彼らを応援したい消費者の距離を縮めることができるはずだ。福島県では、今年販売できる農産物・加工品リストが既にできている。また周辺の県でも、今後風評被害が懸念される農産物が明らかになりつつある。全国に5,000件ある直売所が全て支援に立ち上がれば、大きな国民運動に発展するはずだ。生産者と消費者をつなぐ、苦しむ産地と応援したい消費地をつなぐ、その役割が直売所に今、求められているのではないか。流研も積極的な支援を惜しまない。立ち上がろう、全国の直売所!