第190回 | 2014.05.27

果てない挑戦が時代をつくる ~農業の革命児・岩井社長、カンブリア宮殿に登場!~

5月22日の「カンブリア宮殿」に、「零細農家の救世主! 5000軒の農家を東京とつなぐ流通革命」と題し、日ごろ私が懇意にしているファームドゥ(株)岩井雅之社長が登場した。現在KABSでは、ファームドゥが運営する横浜のあざみ野店と港北店、及び、日の出店に「金次郎野菜」を出荷している。岩井さんから「ファームドゥが、神奈川県に進出したら、神奈川県産の農産物の出荷を頼む」と言われた事をきっかけに、現在のKABSが事業化した経緯がある。

あざみ野店でも撮影を行い、当日は私も立ち会い、少しは期待していたものの、残念ながら「私」も「金次郎野菜」も全く放映されなかった。カンブリア宮殿の取材は徹底しており、1時間の放映のために、100時間の撮影と取材を行うのだそうだ。うちの主力店舗のあざみ野店は、ほんの数秒映し出されただけだが、それでも早くも、「金次郎野菜」の売上に効果が出ており、TV放映の威力はすさまじいと実感する次第である。

TV放映の内容は、群馬・首都圏で30店舗の農産物直売所を運営する ファームドゥの岩井雅之社長を主人公に構成されている。岩井さんは、群馬県を中心に約5,000人の中小零細農家を組織し、集出荷の物流網を構築し、新鮮な野菜を首都圏に届ける流通システムをつくり上げ、農家と消費者双方にメリットをもたらすビジネスモデルを作りあげた。 農産物の直売所は全国にあるが、産地と消費地を結ぶ直売モデルは未だに少なく、同様のモデルでファームドゥを追随する企業は見当たらない。

岩井社長は、特に葉物野菜の価値の80%は、鮮度で決まると発言された。私も全く同感である。その意味で、農家が一番おいしいものを食べていると言え、全国の直売所で販売される農産物はおいしい訳である。鮮度の高いおいしい農産物を消費者に届けることが、ファームドゥのビジネスの原点だ。また、商品の価格は生産者がつけること、その全てに出荷日や生産者名が記されていること、少量での持ち込みでも、曲がった野菜などの規格外品でも販売できることなどは、一般的な直売所と同じであるが、生産者が30店舗の中から販売店を選べる仕組みは、ファームドゥにしかない。

村上龍さんが発言していたが、日本の農業改革でメディアに取り上げられ話題となるのは、自立した強い農家が集まる産直市場や加工、販売まで手がける農業集団・農業法人が中心である。しかし岩井さんは、高齢者が中心で単独では自立が難しい、中小零細農家の目線に立ってビジネスを展開している。厳しい養蚕の労働に耐えていた母や、作物を安い価格でしか買ってもらえず苦労していた父の背中を見て育った岩井さんは、中小零細農家に、様々なニーズがあることに気づき、農家が喜ぶようなビジネスの仕組みを、次々に考え出した。そうして築いてきた農家との信頼関係が、ファームドゥを支えている。地域の農業・農村を支えている中小零細農家のためになることを考え行動する。これは岩井さんが私にも、何度も話してきた一貫した経営哲学である。

番組では、岩井さんが始めた新規事業についてもとりあげられた。その一つが、耕作放棄地を農家から借り上げてファームドゥが太陽光パネルを設置し売電を行う事業である。農家には土地の賃貸料、ファームドゥには売電収入が入ることに加え、太陽光パネルの陰でも育つ野菜を栽培する。この話は、事業化する以前から岩井さんから聞いていた。耕作放棄地であっても、農家はそう簡単に、人に土地は貸さない。直売事業を通して農家との信頼関係があるからこそ、成立するモデルである。土地を提供したいと言う農家側の意向は強く、現在当初の予定より数倍の投資を行い、事業を拡大中である。

もう一つの取組は、モンゴルでも始まっており、首都ウランバートル郊外で地元企業と共同で農場を立ち上げ、野菜作りを行うビジネスも着手している。モンゴルで流通している野菜は中国産が中心だが、鮮度も品質も良いとは言えない。富裕層の増加と健康意識の高まりで、より高品質の野菜に対するニーズは増していることから、日本の技術を使い、おいしい野菜を作れば、モンゴルでも十分ビジネスは成立すると考えている。この事業についても、早い段階から岩井さんから話を聞いていた。モンゴルの人は、おいしい野菜が食べられずかわいそうだ。だから何とかしたい。そんな一直線な情熱が、岩井さんのビジネスの原点だ。

テレビでは放映されなかったが、ファームドゥは、「仙台市農業園芸センター再整備事業」に、共同事業体の代表者として、農業生産法人こもろ布引いちご園、NTTデータカスタマサービス(株)と協同して、再整備事業に参画している。この事業は、仙台市の震災復興計画の「農と食のフロンティア」の支援拠点施設として、民間活力の導入により再整備するもので、約11万平方メートルの敷地に於いて、ICT(情報通信技術)を活用した最先端の農業複合施設を開設し、収益性の高い農業支援拠点の構築を進めている。東北農業の再生、震災からの復興に向けて「夢の持てる農業王国」の開設をめざしている。

その他にも、岩井さんは沢山の企画を持っている。私と会うたびに、様々な絵を見せてくれる。これまで岩井さんがやってきたこと、これからやろうとしていることについて、いつも感心させられるのは、動機や視点が極めてシンプルなことだ。そして情熱をかけてチャレンジする。実は自分でも言われているが、失敗も多い。「失敗からしか人は学べない」これが岩井さんの哲学である。失敗から学び次に活かす。失敗を恐れず果てしなく挑戦し続ける。これは出来そうで出来ないことだ。同じ経営者として岩井さんから学ぶことは非常に多い。

カンブリア宮殿での放映を契機に、岩井さんの益々のご活躍、ファームドゥの更なる発展を期待すると共に、私もまた、挑戦し続け、共に新たな時代をつくりたいと思った。