第172回 | 2014.01.06

時代は今、変わっていく! ~新たな時代をつくる主役になれ~

謹賀新年

農林水産業と地域の輝く未来に向けて

信念と情熱を持って取り組んでまいります

本年もどうぞよろしくお願いいたします

平成26年元旦

株式会社流通研究所

代表取締役釼持雅幸

平成26年がスタートした。今年もまた、不透明で、かつ激動の年になるだろう。しかし、近年では珍しく、社会も経済もさらに良くなるような気がして、どこか明るい気持ちでこの正月を過ごした人が多いのではなかろうか。長引く不況や東北大震災など、長く暗いトンネルから、日本人はようやく抜け出しつつある。一方、明確な道筋が見えているとは言えず、暗中模索の中で、歯をくいしばって生きていかなければ何も変わらないのが現実であろう。さて、本日は新年のあいさつに代えて、今年の私の抱負を述べてみたい。

流通研究所の今年のテーマは、「農林水産業を核とした、実践力が高いコンサルタント集団」である。調査も研究も、構想づくりも大切な仕事である。しかし、農林水産業に特化した中小企業が、社会に貢献し、認められ、生き残っていくためには、他のコンサルティング会社と同じようなことをやっていても未来はない。もう一つのテーマは、「顧客及び地域の人々の心を動かし、行動と成果につなげるコンサルタント集団」である。地域には、絵にかいた餅になっている計画は山のようにある。高い委託料を頂いて、そんな計画を作っても何も意味はないし、社会に申し訳が立たない。顧客や地域の人々に身震いするような感動を与え、情熱を駆り立てて、行動に移させ成果をあげてこそ真のコンサルタントである。

こうしたコンサルタントになるためには、日々の研究はもとより、自ら実践的な活動を行い、知力・気力・体力を鍛え続けなければならない。先ずは私自身が先頭に立って、コンサル道を極めていきたい。そして流通研究所のスタッフにも、これらを強く求め、育て上げていく。実践的なコンサルタント、人の心を動かすコンサルタントになるためには、常にクライアントの視点に立って寝食を忘れて考え抜くこと、常に銭勘定と人の心の動きに気を置くことだと考える。特に、銭勘定は重要だ。それをやって儲かるのか、いくらの資金が必要なのか、自宅を担保に入れてでもやるべき勝負事なのかなど、自分の財布に当てはめて考えてみる習慣が大切だ。

スタッフの育成で、どうしても課題になるのが、経営に関するノウハウの習得である。うちのスタッフは、皆高学歴で優秀であり、マーケティングはもとより、財務や労務など基本的な知識は持っているし、会社の研修支援制度などを活用して各自が研鑚に努めている。しかしその程度の知識では、究極のコンサルタントは出来ない。究極のコンサルタント活動を実践するためには、金と人を自ら管理・運用する力を養い、その覚悟も待つ必要がある。私は社長であるから当然だが、数億円に上る借入金の個人保証に立っており、会社が倒産すれば自己破産の憂き目に会う。自分の家族や財産を犠牲にしても、社員やその家族の夢と生活を守らなければならない。また、社員がひとたび問題を起こせば、その全責任は私一人が負うことになる。一年を通して、資金繰りと社員一人ひとりのことが、脳裏から離れる日はない。

これを社員に習得せよと言うのは無理であるが、これまでやって来たように会社の経営内容の社員への情報公開に加え、経営関連業務の権限移譲を段階的に進めることで、経営ノウハウを持ったコンサルタントへと育成していく方針である。そして、それほど遠くない将来、次世代を担う経営者として育てていきたい。

昨年10月には、かながわアグリビジネスステーション(KABS)の取組として、農産物の直販事業をスタートさせた。これは、県西地区の若手の専業農家を中心に26名の出荷者を組織化し、農産物を買い取って庭先集荷を行い、横浜にあるハイグレードの直売所2店舗まで週3回配送し販売する事業である。「神奈川の若き篤農家達が自信と責任を持って県民にお届けする逸品」と言うコンセプトで、「金次郎野菜」のブランド名で展開している。配送日に合わせ、提携する野菜ソムリエさん達が店頭に立って試食や商品説明などの販促活動を行っていることに加え、各出荷者のもとに取材に赴き、出荷者や産品の情報を満載した「金次郎新聞」を作成し、消費者に配布している。

この3か月間の評価は、正直言って50点である。売上実績は目標を大きく下回っているし、商品ロスも多く、事業収支は赤字である。店舗は、横浜のあざみ野、センター南と言う高所得者層が多い好立地にあることから、黙っていても売れるという甘い観測が私にあったことは否めない。一緒に取り組んでいる生産者の方々には、期待に十分応えられず、大変申し訳ないと思っている。

そこで12月は、課題の把握と具体的な対応策に自ら奔走した。課題は、商品政策及び店舗のオペレーション政策にあることが分かった。商品政策では、価値に見合った価格・内容の見直し、販売データの分析による適正発注量の維持、試食を中心とした店頭販促活動の強化などに重点を置いて改善に取り組んだ。店舗のオペレーション政策では、直売所運営者である(株)ファームドゥの社員とのコミュニケーションの強化、売場管理の徹底などに取り組んだ。その結果、事業収支は大幅に改善したが、まだまだ目標にはほど遠い状況である。

そもそも何故、流通研究所がこの事業に取り組んだのか。一つ目の理由は、地元の神奈川県において、若手の農家を育成し、生産者と消費者との距離を真に縮める新たなアグリビジネスを創造することにあった。県内にはすごい生産技術と高い志を持った若き篤農家がたくさん存在する。彼らの所得向上に留まらず、マーケティング視点に立ったものづくりを支援し、法人化など経営高度化の一助にしたいと考えた。また、新規就農者の受け皿となるような出荷者組織と、販売事業を通した若き篤農家達のプラットフォームを作りたいと考えた。「真に縮める」とは、単なる生産者の顔が見える直売事業ではなく、生産者と消費者が優れた農産物の価値を共有し、お互いが認め合い、信頼し合うブランドをつくりたいと考えた。きれいごとだと笑う人も多いだろうが、人口900万人が居住する神奈川県だからこそ出来るのであり、むしろこの神奈川県でこのビジネスモデルが成立しない訳がないと信じている。

二つ目の理由は、流通研究所の実践的なノウハウの取得、企画力・提案力の強化である。冒頭に、流通研究所の今年のテーマは「農林水産業を核とした、実践力が高いコンサルタント集団」であると書いた。実践力を高めると言う限り、実践的な自主事業をやっていて当然である。口先だけのコンサルタントでは、何を言っても説得力に欠ける。私自身、この3カ月間のKABS事業を通して、生産者のものづくりにかける情熱が農産物の品質を大きく左右すること、集荷・配送物流の効率化が事業収支のキモになること、ブランドシールやPOPなどの媒体だけでは消費者に価値は伝わらないことなど、実に多くのことを学んだ。出来ることならこの事業を将来的に第2の経営の柱にしていきたいが、現状を考え合わせると、今はそれを語るレベルにはない。しかし、株式会社の自主事業として取り組むからには、ここで培うノウハウ・企画力・提案力を最大限活かし、国や全国の自治体に働きかけ新たな受注に結び付けるなど、営業面での相乗効果をあげていくことは当然の責務であると考えている。

この事業は、私の地域農業に対する情念の「カタチ化」であり、経営理念の実践として始めたことだ。これより流通研究所は、一年間で一番多忙なシーズンを迎えることになるが、一定の道筋が見えるまで、私が陣頭指揮をとり、少なくとも毎週土曜日には自ら店頭に立つ。

時代は今、変わっていく。その中で私も、新たな時代をつくる主役になりたい。いつの時代も、自分が選ぶ道や決断することに正解などはないのだろう。だからこそ、自分が正しいと信じた道を、勇気と情熱を持って前進していく一年にしたい。