第278回 | 2016.04.04

新年度スタート、大いなる大志を抱こう!
~ 平成28年度の新たな挑戦 ~

平成28年度がスタートした。桜が咲き誇り、フレッシュマン達があふれるこの季節は、世の中全体がわくわく感で浮立つようだ。流通研究所は官公庁主体のコンサルティングを行っていることから、3月末でほとんどの仕事が終わり、4月から多くの仕事が始まる。色々な意味で、リセット・リスタートの時期であると言える。

流通研究所は農業・水産業に領域を絞る一方、生産から販売まで全ての事業にかかわるプロフェッショナル集団をめざしている。その中で、常に新しい分野に挑戦し続けていくことを、4月1日の定例会議でも確認した。これまでも同じ仕事は一つとしてなかったが、いくつかの得意分野としての業務パターンはあった。しかし、時代が刻々と変化する中で、これまでの分野や手法に甘んじていては、やがて時代の流れに取り残され、社会に必要とされない会社になってしまうだろう。昨年度は沖縄支社を開設し、輸出事業にも積極的に取り組んだ。今年度はさらに、スタッフ個々が大いなる大志を抱き、新たなマーケットを創造していくことを誓った。以下は、流通研究所が平成28年度に挑戦する、KABS(かながわアグリビジネスステーション)事業にかかわる二つの新たな取り組みを紹介したい。

一つ目は、金次郎野菜の販売事業の新展開である。私のコラムでも何度も紹介してきたが、この事業は、県内若手農家の育成と県内での新たな流通の仕組みづくりをめざし、買い取りを前提に庭先集荷を行い、野菜ソムリエが店舗で販促活動を行うことで、県内産の高品質の農産物を「金次郎野菜」というブランド名で、生産者と産品の価値を伝えていく流通研究所の自主事業である。昨年度は神奈川県とも連携して、県内における生産・流通網を拡充し、現在の出荷者は約50名まで増え、販売先は基幹店舗であるあざみ野ガーデンズに加え、大丸東京店、そごう横浜店、ヤオコー平塚店、西武小田原店などまで拡大した。その結果、売上自体は増えているものの、物流・販売効率の悪化、ロス率の拡大などの課題も浮上してきた。

こうした背景を踏まえ、平成28年度は流通研究所の直営店の開設を検討する。現在の売場は、各店舗の一角に専用コーナーを設け、委託販売方式(一部の店舗は買取方式)を原則に販売している。各店舗が持つブランド力・集客力を活かした有利販売ができることに加え、投資が軽減でき、リスクも比較的少ないが、悪く言えば他人任せの商売である。そのため、売場面積や品揃えも限定され、自由な販促活動が出来ないなど弊社の思惑通りにはことが運ばないことに加え、各店舗との意思疎通が滞ると多大な商品ロスが出るなど課題も多い。

直営店が出来れば、こうした課題が解消できることに加え、売上も格段に増え、県内若手農家とその産品のブランド化という目的に沿った事業展開が可能になる。さらには、支援している全国の産地のマーケティング拠点としての機能や、加工・軽食機能、情報発信機能など、新たな機能の発揮も期待出来る。

しかし、相応の投資が必要であり、リスクも高いことから、直営店出店にあたっては様々な角度から調査し、時間をかけて検討しなければならない。特に、どこにどのような形態で出店するのかがポイントとなる。現在のところ、物流効率を踏まえ場所は横浜周辺、店舗の規模は10~15坪程度で、商業集積地でのテナント出店を想定している。これより本格的に物件探しに着手するが、よい物件の心あたりがあれば、是非紹介して頂きたい。

二つ目には、㈱おだわら清流の郷での「市民農家育成プロジェクト」である。㈱おだわら清流の郷は、小田原市の曽比地区において、地域の農地と農業を守り、地域の活性化に結び付けることを目的に、流通研究所が出資のもと、平成24年に有志5名で立ち上げた集落営農型の農業生産法人である。これまで基幹作物である米に加え、なすやおくらなどの露地野菜を生産し、箱根や熱海のホテルなどに加え、㈱流通研究所を通してKABSの販路などで販売してきた。また、平成26年度には小田原市の認定農業者となり、地域の中核的な担い手として位置付けられている。

農家の高齢化や減少が続く中で、地域では年々耕作放棄地が拡大しており、清流の郷も努力を重ねてきたが、もはや農家だけでは地域の農地と農業を守れない状況になりつつある。そこで、小田原市民を新たな担い手と位置づけ、私たちのパートナーとして迎えることで、農家と市民が一体となって農業に取り組んでいけないものかと考えた。特に、定年退職した方々は、体力も気力も充実しているし、前職を通して多くの知恵や技術を持っているため、地域農業の次世代を担う中核的な人材になると考えている。

こうした背景を踏まえ、平成28年度は、小田原市からの支援を受けて、農業に興味・関心がある市民を広く募集して雇用し、耕運機の使い方から精米の方法まで、あるいは野菜の種まきから収穫や袋詰めまで、米と野菜の生産から販売までの技術を習得して頂き、一人前の農家として育成する事業に取り組むこととした。さらに、この度パートナーとして迎える市民の方々には、希望に応じて、現在清流の郷が取り組んでいる、身障者に農作業を担わせ共に野菜をつくるなどの農福連携事業の担い手として育成することも考えている。そのために、約5反の畑作専用ほ場を確保した。これまでも、地域の非農家数名を雇用し、共に農作業に取り組んできた経緯があるが、今後は、こうしたノウハウを活かしつつ、目的性を明らかにした事業に取り組んでいく方針である。

地域の農業を維持・発展させ、地域活性化を実現するためには、市民の力が必要である。都市部では、JAと市町が協力して市民農業塾のような事業展開を行う事例が多く見られるが、その役割を農業生産法人が担い、商業ベースを基本にかたちにしていこうという挑戦である。指導体制や育成プログラムの充実、栽培品種の選定、品質の確保など、様々な課題があるものの、市からの支援が内定しているだけに、確実な成果を出さなければならない。私は立場上、現場に貼り付くことはできないが、休祭日などを活用し、出来る限りこのプロジェクトに参加し、共に汗をかいていきたいと考えている。

さて、待ちに待った春が来た。そして新年度がスタートした。大いなる大志を抱いた流通研究所の新たな挑戦に、是非ご期待頂きたい。