第97回 | 2012.05.28

拠点施設の管理・運営体制を考える ~地域力と経営力の両立~

道の駅に代表される地域活性化の拠点施設は、既に全国で整備されている。中山間地域では、ほとんどの施設がいわゆる平成の市町村合併以前に整備された施設、あるいは合併公約で整備された施設であり、交通量や商圏人口が少なく、苦戦する傾向にある。観光地型は、その観光地の盛衰と景気動向に左右されやすく、また観光シーズンや曜日によって利用者が大きく増減することから、難しい経営を強いられる傾向にある。勝ち組・負け組へと二極分化が進む中で、管理運営体制の再構築が新たな課題としてクローズアップされつつある。

以下は、弊社が施設の立ち上げを支援した、千葉県の道の駅・「富楽里とみやま」と、最近視察に行って感服した、東京都の道の駅・「八王子滝山」の管理・運営体制の概要を記載する。

道の駅・「富楽里とみやま」は、千葉県南房総市の、高速道路・一般道両方から利用できるハイウェイ・オアシス方式の道の駅であり、年間売上高は10億円を超える。駐車場台数は257台、直売、飲食に加え、4つのテナント店が存在する。第3セクターが施設全体を管理する中で、農産、水産、商工の3つの組織が実質的な運営にあたり、相互連携により高度な商品・サービスを提供し、高い事業効果をあげている。第3セクター・出荷者・出店者が運営協議会をつくり、定期的な情報交換に加え、共同のイベントを開催するなど、一体的な推進体制を築いている点が成功のポイントであると言える。

【道の駅・富楽里とみやまの管理・運営体制】

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道の駅「八王子滝山」は、東京都八王子市の、中央自動車道八王子インターチェンジ出口付近に位置する道の駅であり、年間売上高は7億円を超えている。駐車場台数107台、直売、飲食に加え、3つのテナント店が存在する。プロポーザルで選定された㈱ウェイザ及びニッポン道路興運㈱連合体が指定管理者となり、JAや農業生産法人が実質的な運営にあたり、特色ある商品・サービスを提供している。民間企業が指定管理者となり、企業力・企画力を活かしながら、地域団体などとの連携体制を築いている点が成功のポイントであると言える。

【道の駅・八王子滝山の管理・運営体制】

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多くの拠点施設では、公設民営方式を採用しているが、公設民営方式には4つのパターンが存在する。先ずは第3セクター方式と完全民営方式に区分され、さらにそれぞれ、新たな組織を設立するパターンと、既存企業・団体等が指定管理者になるパターンに区分される。道の駅の場合、これまで公益的な機能と収益的な機能を併せ持つため、第3セクター方式を採るケースがほとんどであった。第3セクター方式は、市の財政出動が必要となることに加え、半官半民という立場から職員の運営意識の低下や甘えが発生しやすく、関連団体からの過度な要求などを受けやすい傾向にある。

完全民営組織による運営方式は理想ではあるが、十分な運営ノウハウが確保できるか、潤沢な資本金や運転資金の確保が可能か等の課題が残る。一方近年、指定管理者制度の導入により、道の駅「八王子滝山」のように、指定管理者がプロポーザルにより選定されることが前提となり、経営力・企画力を持った民間企業も、その主役としてクローズアップされつつある。

指定管理者制度では、飲食店や軽食コーナー、物販コーナー等でテナント出店方式を採用するケースが多い。指定管理者側の視点に立つと、テナント料で安定した収益を確保できる一方で、直営部門が減少することからより高い収益確保の道が閉ざされることになる。また、出店者それぞれの経営努力は期待できるが、利益確保のために特色のない一般受けするメニュー構成や仕入に頼った品揃えに走る可能性も高い。テナント出店方式で成功している事例を見ると、既存の商工業者を公募するよりも、地域の女性グループや生産者組織などを育成して出店させる方式をとっているケースが多い。

テナント出店方式は、施設全体での連携が希薄になるなどの課題があることから、道の駅・「富楽里とみやま」のように、指定管理者・出荷団体・出店者が運営協議会をつくり、相互の連携を強化し、参加者が一体となった運営を目指すことが重要である。

いずれの拠点施設でも、地場の農林水産物の直売が最大の売りである。しかし近年は、農産物からの残留農薬の検出、品質の低下、低価格化、仕入品の拡大などが課題になっている。そこで、生産履歴の記帳を徹底させるとともに、品質の向上、不当な価格での販売の禁止など、出荷者・出荷組織に対する管理を強化するとともに、道の駅直売所運営協議会やJAが指導力を発揮し、定年帰農等の新規就農者や農家女性の参画を促進し、出荷者を確保・育成し、年間を通して安定した品揃えを実現するための出荷体制を構築することが重要なポイントとなる。

首都圏で20か所以上の直売所を開設している(株)ファームドゥの店舗では、約50%の売上がオリジナルの加工品であり、店舗の大きな魅力になっている。100件を超える商工業者は(株)ファームドゥに出資することに加え、この店舗には自社製品しか出荷できないルールになっており、その結果、店舗に出荷する農家などに原材料を求め、商品開発を進めると言う農商工連携が必然的に進む仕組みになっている。道の駅や直売所などの拠点施設をプラットフォームとした6次産業化を促進し、商品魅力の向上に努める点は特に重要である。

このように、拠点施設の管理運営にはいくつかのポイントがある。地域の状況によって課題は様々であろう。しかし、地域を取り巻く環境が一段と厳しさを増す中にあって、民間企業への全面的な移管など、ドラスチックな改革を迫られる時代になって来たと言えよう。