第119回 | 2012.11.05

大手企業の参画で次のステージを目指せ! ~フード・アクション・ニッポン アワード2012表彰式より~

去る11月2日、有楽町朝日ホール(有楽町マリオン11階)で、第4回目となる「フード・アクション・ニッポンアワード2012」の表彰式が開催された。会場には、50件を超える受賞者及びその関係者に加え、多くのマスコミが集まった。受賞式の後半では、郡司農林水産大臣も駆けつけ、祝辞を頂いた。有楽町の駅前広場では、受賞者の見本市も開催され、過去4回の中で、最も華やかな授賞式となった。

「フード・アクション・ニッポンアワード」とは、食料自給率向上に寄与する事業者・団体などの取組を広く募集し、優れた取組を表彰することにより、食料自給率向上活動を広く社会に浸透させ、私たちや未来の子どもたちが国産の食品を安心して、おいしく食べていける社会をめざすもので、今年も全国から900件を超える募集があった。「フード・アクション・ニッポン」は、食料自給率50%を政策目標に掲げる民主党の重点政策の一つである。食料自給率自体を政策目標とすることについては賛否両論があるが、食に係る事業者や団体が、より豊かな食と健全な農林水産業の発展をめざして行こうとする取組を支援する政策として、私は、この事業の意義は大きいと考えているし、創設以来委員を務めさせて頂いていることを大変誇りに思っている。

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今年は、審査員の入替があり、「ラ・ベットラ・ダ・オチアイ」オーナーシェフの落合務氏、「モンサンクレール」オーナーシェフの辻口博啓氏、料理研究家の松田美智子さんという3名のビッグネームが新たに加わった。審査会は9月27日に開催しており、日本一受けたい授業でおなじみの赤池委員長、野菜くらぶの澤浦さん、東大の中嶋先生、伊藤忠ファッションシステムの吉水さん、消費科学センターの大木先生、そしてヤマケンさんらと共に、5時間を超える激論の末、各受賞者を選考してきた経緯がある。

商品部門最優秀賞は、「国産米の新しい需要創造に向けて!お米で作ったシリアル『全農コメフレ』」で三菱食品が受賞した。米の最大の集荷団体であるJA全農とシリアルメーカー大手の日清シスコとの共同開発で、米によるシリアル市場を新たに創造したことが高く評価された。

流通部門最優秀賞は、「商品開発から売場開発まで、米粉を通じた食料自給率向上に向けた取組」で、セブン&アイ・ホールディングスが受賞した。大手メーカーなどと共同開発した米粉菓子・米粉関連商品などを、セブン・イレブン、イトーヨーカ堂、ヨークベニマルなど、全国14,500店舗で取り扱い、PR・販売し続けて来た実績が評価された。

販売促進・消費促進部門最優秀賞は、「家庭料理にもっと米粉を!~大分市米粉料理インストラクター制度~」で大分市が受賞した。3年前から市の政策として同制度を導入し、市民への米粉の普及に力を入れてきた。毎年活動の広がりが見られることに加え、近隣自治体も同様の制度を導入するなど、波及効果が高い仕組みである点が評価された。

研究開発・新技術部門は、「農産物、食品の抗酸化活性測定法『SOAC法』の開発」で、カゴメ並びに愛媛大学が受賞した。野菜には、健康に害を与える活性酸素を抑える物質が多く含まれていることが解明されているが、カゴメと愛媛大学の共同研究により、それぞれの野菜が持つ抗酸化活性の数値を容易に測定する方法を開発した。また、これらの測定値を宮城県産の農産物などに表示することで、被災地復興支援につなげることをめざしている。

そして、栄えある大賞は、「北海道産飼料用米を活用したオリジナル商品『黄金そだち』」で、生活協同組合コープさっぽろが受賞した。『黄金そだち』とは、道産飼料米を使って飼育した牛、豚、鶏や、牛乳、卵などの畜産物全てにつけられるブランド名である。最も評価されたのが、飼料米の生産・仕入から商品の製造、そして販売までの一貫したネットワークの構築である。ブランド商品への評価が高まれば、食料自給率向上に向けたプラスの連鎖が期待できる。まだまだ発展途上のプロジェクトであるが、道内の生産から販売までの大連携による取組として、その将来性が期待された。

今年のアワードの一つ目の特徴は、米関連が上位を占めたことだ。多用途米・飼料米は手厚い政策もあり、生産も盛んでビジネスとして軌道に乗って来た感がある。反面、補助率が相対的に低くなった麦・大豆に向けた取組は、やや後退気味の感もある。国産大豆については、生産量の減少から価格が高騰気味で、食品メーカーの取組意欲を減退させているようだ。また、ヤマケンさんが総評で述べたように、油脂類などまだまだ取組が立ち遅れている商品分野は多い。

二つ目の特徴は、大手企業の募集が多くあったことだ。大手企業が、食料自給率向上運動を力強く牽引しつつあることは高く評価するし、過去4年間の取組により社会的な運動に広がって来たことは、審査委員の一人として大変嬉しく思う。反面、農産物価格の低迷を招き、担い手が育ちにくい農業環境をつくってきた責任の一端は大手企業にあると思う。経済性を重視し、スケールメリットを追い続ける大手企業の経営姿勢が、弱い立場にある生産者の経営を悪化させて来たと言えよう。大手企業が、日本の農林水産業の発展と国民生活の向上を理念に掲げ、農林水産物の価値を適正に評価し、生産者と消費者をつなぐ取組を全国的に拡大して頂くことを切に期待する。