第14回 | 2010.08.30

地域の活性化拠点を活かせ! ~岐路を迎えた道の駅~

全国約1,000か所に達した道の駅は、最も事業効果が高い地域活性化のためのビジネスモデルのひとつと言えよう。弊社もこれまで十数件の道の駅の立ち上げや設計を支援してきたが、いずれの施設も大きな成果を上げている。しかし、直売所同様、道の駅も過当競争時代に突入し、業績不振に陥る施設も見られる。周知の通り道の駅は、休憩機能や情報発信機能を持つ一方で、販売・飲食など経済機能を持っており、言わば公益事業と収益事業を両立させているところに特徴がある。利用者にとって絶対的な安全・安心のブランドであり集客力は高いものの、市場環境が変化する中で、公益性を発揮しつつ健全経営を目指していくのは容易ではない。発展か衰退か、道の駅は今、岐路に立ちつつある。今回は、マーケティング、マネージメントの両面から、道の駅の改善方策を考えてみたい。

先ずはマーケティング領域であるが、その改善方策を一言で言えば「立ち寄り型から目的地型への転換」である。トイレ休憩などで多くの利用者が立ち寄るが、そのうちレジ通過者は2~5割と考えられる。いかに多くの利用者に立ち寄ってもらい利用率をいかに高めるかが改善のポイントであるが、特に道の駅によって利用率が大きく異なっている事実に着眼する必要がある。また、道の駅の利用者特性を見ると、概ね観光客・通行客が全体の7~8割を占める観光地型、地域・広域の住民が顧客の過半を占める地域型などに分類されるが、リピーターの確保と口コミでの利用者拡大が共通のテーマとなる。道の駅の収益部門は、概ね直売・加工・飲食・体験によって成り立っているが、目的性向上のためには、それぞれの分野で軽微な施設改修を含めたてこ入れが必要になる。

直売部門については、やはり農産物が最大の売りになっているようだ。農産物直売は、以前このコラムで特集したので多くは語らないが、道の駅の場合、多品種少量による年間を通した品揃えに加え、旬の目玉商品が必要である。千葉県の「たけゆらの里おおたき」は独特な味覚のたけのこが有名で、春はたけのこのみを目的に多くの利用者が殺到している。山形県の「寒河江チェリーランド」ではさくらんぼ単品で一億円を超える売上をあげていると聞く。こうした目玉商品を、地域の農業振興、あるいは食文化の発信などの施策にからめて創造していくことが重要である。また、立地によっては地場産のみの品揃えにこだわる必要はないと考える。山梨県の「道の駅・どうし」は、山中湖から相模原市に抜ける一本道・通称「道志道」に立地するが、ここを通る利用者は、地場産に加え県内の土産品も求めており、「信玄餅」の品揃えは必要不可欠となる。

加工部門では、地域の女性グループなどによる活動レベルに留まっている事例が全国的に多いようだが、一方で、高知県の「あぐり窪川」は、「ブタマン」が大ヒットして県下のコンビエンスストア向けへ出荷するほどの事業規模となり、さらに加工施設を増設して「米粉パン」などのヒット商品を続々と生み出している。また、商工業者がテナント出店し、加工部門を担い大成功している事例も見られる。千葉県の「富楽里」では10坪あまりのテナントブースを3つ設置しており、地域の企業が参画して大いに繁盛している。特に異業種参入であった「青倉の惣菜」は一大ブランドとなり、土日は店舗周辺が大混雑する状況である。農商工連携により、外販まで視野に入れた、儲かる加工業への転換を目指したい。

飲食部門は、休憩機能を持った道の駅の生命線とも言える。食事に魅力がなければ利用率は上がらず、直売・加工部門の売上も低迷するという構図にある。地域の商工業者がテナント出店するものの、採算が合わず撤退を繰り返す事例も多いようだ。なかなか改善の切り札は見当たらないが、立地環境によっては、バイキング方式への転換を薦めたい。鹿児島県の「すえよし四季祭市場」では、バイキングレストランに業態転換したことで、ランチタイムは毎日30人待ち、40人待ちといった盛況ぶりである。バイキング方式は、併設する直売所で旬の食材を仕入れることで日替わり・週替わりのメニューを提供できる、注文・上げ膳・下げ膳等の手間がいらず人件費を抑えることができる、地域の女性達の創意工夫による展開が可能で素人でも取組やすいなどのメリットがある。しかし原価管理・ロス管理、相応の利用者回転数の確保など、クリアすべき課題もある。

体験については、施設内で食品・工芸品の加工体験、地域農家と連携した体験農園・市民農園などの展開が見られるが、必ずしも事業効果につながっていない事例が多い。利用者や地域特性によって、その改善方策はかなり異なるため、別の機会に詳述してみたい。

最後にマネージメント領域での改善である。道の駅は、公益機能と収益機能を併せ持つ施設として、行政主導の第3セクターが管理・運営にあたるケースが多い。利益が出ているうちは良いが、一度赤字運営に陥ると行政負担の上昇→投資の減少→施設魅力の低下→利用者・売上の減少といった、負のスパイラル現象に陥ることになる。これを打破するためのキーワードは「地域連携と民間活力の導入」であると考える。直売・加工・飲食ともに、農業者だけでなく、地域の商工業者を巻き込むことで、商品開発や集客イベントなど新たな活性化手法を生み出すことができる。また、90%以上が市町村の出資といった第3セクターでは、思い切って地域の企業の出資を仰ぎ、役職員の刷新や経営理念・経営方針の再構築を進めたい。マネージメントの改革は、これまでの経緯やしがらみがあって容易なことではないが、ここにメスを入れない限りマーケティング領域の改革も進まない。

昨年度は「道の駅・どうし」の経営改革を支援し、民営化と売場改善を進めた結果、今年は早くも大きな成果が出ている。道の駅が岐路を迎えている今こそ、地方自治体のトップ・担当職員は、改革に向けた英断が必要である。