第123回 | 2012.12.10

デフレからの脱却を本気でめざした政策を! ~これ以上の物価下落を許すな~

前号では、改めてTPP参加反対の理由を述べ、国政選挙での清き一票を読者の皆さんにお願いしたところである。党首会談などのテレビ放映や、新聞・雑誌などの特集を読んで、私はこの度の選挙でどの候補者・政党に投票するか、ようやく腹が決まったところである。そして、この度の選挙は、もしかすると今後の日本を大きく左右する程の、大事な意味を持つのではないかと考え始めた。

多くの国民の関心事は経済対策にあると思うが、その中でも私は、新政府が取り組むべき喫緊の重点課題は、デフレスパイラルからの脱却であると考える。ものが売れなくなり、価格が下がり続け、給料が下がって貧乏になり、安いものしか買えなくなる。国産農産物の価値を認め、適正価格で買い支えようと言っても、先立つお金がない。スーパーの価格競争はもうやめようと言っても、生き残るためには、価格を下げざるをえない。個人の消費志向や企業スタンスも大きいが、価格が下がり続けている根底には、デフレスパイラルという病気にかかってしまった日本経済がある。

このままデフレスパイラルという病気が進行すると、本当に大変なことになる。企業は赤字続きで、従業員の所得は減り解雇も増えるので、当然税収は減る。税収が減ると公務員の給与カット・削減はもとより、国・県・市町村は、インフラ整備や安全対策、教育・福祉・医療など、絶対にやるべき公共事業さえ出来なくなり、国民の生活さえ脅かされるかもしれない。もちろん農業振興予算も大幅な削減を強いられる。

また、デフレはさらなる円高を招くので、国際競争力が落ちて輸出も低迷する。そこで企業は活路を海外に求め、海外へ製造拠点を移転することとなり、いわゆる産業の空洞化がさらに進み、日本では雇用も所得も生まれないばかりか、円高とあいまって海外の製造拠点で作られた激安商品が日本に逆輸入され、国産品はさらに淘汰されることになる。デフレスパイラルとは、こうした悪循環により、奈落の底に落ちて行くというとても怖い病気であり、現在の日本経済はこの病気を悪化させつつある。

バブル崩壊後、自民党政権下で様々な政策が打たれて来たが、デフレを止めることは出来なかった。そして、「コンクリートから人へ」のキャッチフレーズで民主党政権が実現したが、デフレはさらに悪化したと言えよう。税収が減り財政が逼迫する中で、少子高齢化、人口減少が顕著になり、税と社会保障の一体改革が打ち上げられ、消費税増税関連法案が可決された。また、「ムダをなくせ」と事業仕分けや職員定数是正、公共事業費の削減などに取り組んだ。国の借金は、GDPの2倍以上に膨らみ財政破綻状態にあるギリシャをはるかに上回ることから、これ以上の公共事業を行えば、日本も財政破綻する。次世代に負担を残すな。緊縮財政を徹底するので、国民も増税や社会保障費カットと言う痛みを分かち合って欲しいといった考え方だ。その一方で、経済を立て直すには自由貿易しかないと力説している。

さて、デフレスパイラルから脱却するにはどうしたらよいのか。少なくとも現在の民主党政権の政策では、状況を悪化させるだけだと考える。私は専門家ではないので、このあたりのことは、あまり理論的には語れないし、間違っている点もあると思うが、批判を恐れず自分の考えを述べてみたい。衆議院解散前に、自民の安倍総裁は「日本銀行券をどんどん刷ってマネーサプライ(お金の流通量)を増やし、公共事業をがんがんやって、デフレを解消できなければ消費税は上げない」などと発言し、民主党はもとよりマスコミからも暴言であると叩かれたことがある。しかし私は、それが正しい経済政策ではないかと考えている。

マネーサプライを増やしても、民間企業の投資意欲が減退しているので金余りを招いて金融市場を混乱させるだけと言うが、民間の投資が冷え込んで今の状態を招いているのだから、民間に代って政府がその金を使い投資すればよい。公共事業の拡大で再び国の借金が増えると言うが、国債の引き受け手の9割は国民であり、ギリシャのようにドイツから金を借りることになる訳ではなく、財政破綻などあり得ない。

公共事業は、建設業界を潤すだけのことを意味するのではなく、次世代に向けた国の基盤づくりと言う必要不可欠な投資である。今の日本があるのは、何十年もの間、公共事業で様々な社会的基盤を築いてきたからだ。財政が厳しいからと言って国が投資を怠れば、次世代の発展はない。公共事業の拡大は、雇用と所得を生み出し、消費を誘発してデフレからの脱却を実現する。これまでのように中途半端なことはせず、成果が出るまで、何年でも公共事業を拡大し続けることが正しい政策であると考える。自然エネルギーへの転換、老朽化した道路・トンネルなどの補修、さらには農林水産業の生産基盤など、投資すべき領域はたくさんある。

このような経済環境の中、政党の点数稼ぎのために、細かいムダを突き続け、公務員をいじめても何も好転しない。推進派の候補者は、公共事業の意義と成果をしっかりプレゼンし、国民の理解を得るよう努力して欲しい。

もう一つは消費税増税の時期である。2014年4月から段階的に増税することが決定した訳ではない。消費税関連法案では、デフレが解消してはじめて消費税を引き上げると言う約束事になっている。高齢化が進展する中で、国民が平等に負担でき景気に左右されない消費税の増税は必要だと思う。しかし、病気にかかってしまった人に、重労働を強制するようなもので、現在のような経済環境の中で増税したら、さらに病気が悪化することは明らかだ。したがって、先ずは公共事業によるデフレ対策を徹底し、状況に応じて増税の時期を先送りすることが正しい政策であると考える。

さて、勢いに任せてえらそうに好き勝手なことを書かせて頂いたが、政治家ではない私の思いは、選挙での投票というかたちでしか表現できない。私の考えに共感頂いた方々、もう一度各党の選挙公約を読み返し、明るい未来を信じて12月16日は選挙に行こう。