第186回 | 2014.05.01

スーパーの価格戦略のゆくえ ~主要スーパーの決算概要と今年の展望~

昨日、全国主要スーパーの決算内容が公表された。本日は、2013年度の決算内容に見る主要スーパーの基本方針を簡単に分析するとともに、今年の価格戦略について考えてみたい。

【主要スーパーの2013年度決算の概要】
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*()内の店舗数は前年度からの増減、その他は前年度との増減率

【主要スーパーの食品粗利益率(2013年度決算)】

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2013年度の総合スーパー、食品スーパーの食品の売上は概ね好調だった。イトーヨーカ堂、ダイエーを除く7社は、いずれも前年比を上回る実績をあげた。特にイズミの6.7%増、ヨークベニマルの5.4%増という数字は、近年の食品業界の中では驚異的な数字と言える。一方、日本チェーンストア協会が発表した3月のスーパーの平均売上高は、前年同月比で9.4%増という極めて高い数字が出ており、景気の拡大に加え消費税アップを見越した駆け込み需要が業界全体の売上を押し上げたと言える。

様々な業界紙などの情報を分析すると、食品部門の好調の大きな要因として、惣菜及びカット野菜マーケットの急成長があげられる。簡便志向はさらに高まっており、家庭で調理する手間が少ない食品が相変わらず人気のようだ。生鮮の青果物の需要が大きく落ちている訳ではないが、今後も惣菜・カット野菜マーケットは拡大することが予想されることから、生産者・産地は、業務・加工用取引を進めるなど、販売戦略の転換を本気で考えていく必要があろう。

余談になるが、高所得者層が訪れる我がKABSのあざみ野店においても、「サラダ」をテーマに販促を行うと実によく売れる。洗って、皿に乗せてドレッシングをかけるだけという簡便性と、ヘルシー感を訴求することで、消費者の購買意欲は高まるようだ。一方、煮て、炒めて、様々な味付けをしてという複雑な調理方法を提案しても、消費者はあまり反応しない。料理が趣味の私としては、こうした消費者志向を非常に嘆かわしく思うが、これが現実である以上、売るためには、簡単に食べられる調理法に重点をおいた販促手法を工夫しなければならない。

この度公表された決算内容で、私が注目したのは各社の粗利益率である。粗利とは、簡単に言えば「売上高‐仕入高」であり、75円で仕入れて100円で売れた場合の粗利は25円となる。一般に、粗利益率が高ければその分スーパー側の利益は多きく、低ければ利益は小さくなる。また、低価格路線をとるスーパーは粗利が小さく、高価格路線をとれば粗利は高くなる傾向にある。しかし、大量仕入などにより仕入価格を低く抑えられれば、低価格で販売しても相応の粗利は確保できる。

総合スーパーである、イオン、イトーヨーカ堂、ユニーの3社を比較してみよう。いずれのスーパーも、店舗全体の粗利益率に対して、食品の粗利益率はいずれも低くなっている。商品によって利益構造が異なるため、一概には言えないが、食品、特に青果物は客寄せパンダであり、利益は出なくてもよいなどと業界で言われる所以を伺い知ることができる。

次に食品の粗利益率を比較すると、イトーヨーカ堂、平和堂、マルエツなどは27%を超えて高く、イオン、イズミなどは24%台と低い。また、ユニーは20.5%と極端に低いことが分かる。商品の仕入価格、商品のグレード、店舗の運営方法や販売促進コストなど様々な要因があるため、これもまた一概には言えないが、粗利益率が高いスーパーは高価格戦略、低いスーパーは低価格戦略をとる傾向がある。

今年は、各スーパー共に、PB商品のテコ入れを予定しているようだ。日本農業新聞によれば、イオンはPBの「トップバリュ」を刷新し、高付加価値の商品から低価格の商品まで、幅広い品揃えを進めるようだ。消費税増税を受けて、消費者の二極分化が一層進むとみており、両方の顧客獲得を基本に、多様なニーズに対応した商品政策を打っていくという。

ちなみに、高所得者層の利用が多いKABSのあざみ野店では、消費税増税の影響はほとんど感じない。むしろ、右肩上がりの景況感からか、高品質な商品に対する購買意欲は高まっており、このゴールデンウィークの「金次郎野菜」の売れ行きは絶好調である。私は、「金次郎」ブランドの認知度が高まって来たと実感する昨今、高品質・高価格を基本とした強気の姿勢で臨みたいと考えている。

消費税が増税した一方で、景気が右肩上がりの今年は、どのスーパーに軍配が上がるのか注目したい。