第183回 | 2014.04.07

イベント販売の効果と課題 ~KABS事業報告~

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年度末の3月27日から31日までの5日間、海老名の「ビナウォーク」にある丸井の1階・食遊館において、「相模の国フェア‐金次郎野菜直売会」と銘打ったイベントを行った。「ビナウォーク」は神奈川県の県央地域における近未来的な商業集積であり、「マルイファミリー海老名」はその核店舗である。このイベントでは私自ら陣頭指揮をとり、29日(土)、30日(日)、及び31日(月)の最終日の3日間は、マイク片手に店頭販促に汗を流した。

催事場は、1階の正面入口で最高の立地。売場や陳列什器は、全て丸井の担当者にセッティングして頂いた。委託販売方式であるが、手数料はびっくりするほど安い。また専任の販売員さんを常時売場に配置して頂き、品出し・ラベラー貼り付け・陳列までやって頂くなど、至れり尽くせりの対応に頭が下がる思いだった。丸井の担当者の真摯な対応と熱意に改めて感謝する次第である。

売上高は、5日間で約50万円だった。はじめての取組であり、リスクを回避するため、出荷量を意図的に抑えたが、まだまだ売れたのでないかと思う。販売品目は、トマト5種類、クレソン、ほうれんそう、わさびな、からしな、のらぼうな、むらさきキャベツ、アスパラガス、原木しいたけ、こめ、もちごめ、ラナンキュラス(切り花)、ジャム、いちご、キウイ、みかん、中晩柑など、KABSの主力商品の25品目程度とした。最終日は値引き販売も行ったが、こめ、ジャムなど一部の商品を除き、ほぼ完売した。

常設の売場である横浜のあざみ野店などでは、野菜ソムリエさんが中心になって繰り返し店頭販促を行い、ようやく商品の認知が進み「金次郎ファン」が増えつつある。その一方で、この度のイベントは、初めてのお客さんばかりであり、どれだけうちの商品に興味・感心を持ってもらえるのか不安が多かった。県西地区の若手農家達のプロジェクトであること、値段は少し高いが若きエース達が、自信と責任を持ってお届けする逸品であることなどに加え、直売ならではの鮮度や一般流通品との味感の違いなどを伝え続けた結果、多くのお客さんから支持を頂けたと実感した。

しかし、イベントだから買ってもらえたと言う面は否定できない。「マルイファミリー海老名」には専門業者のテナント出店による青果物売場があるが、ここの青果物の価格は高くはない。「金次郎野菜コーナー」を常設した場合、果たしてこの度のような売上を確保できるかどうかは疑問である。現在「金次郎野菜」は、ファームドゥの日の出店(東京都八王子近郊)にも出荷している。この店はイオンモール内にあり、イオンの青果部売場と隣接しているが、そこそこの売上が上がっている。いかに市場流通品との違いを訴求できるかが売れ行きを決定するポイントになるが、同じ売場で勝負するための決め手はまだつかめていない。商品特性や商品価値などをもっと分かりやすく売場で訴求できる手法を確立する、これが今後の第1の取組課題である。

この度のイベントの最大の目的は、「マルイファミリー海老名」との継続的な取組の実現にあった。担当者からは高い評価を頂き、イベント時での継続的出店の要請意向を示して頂いたが、社内での調整もあり即断という訳にはいかないようだ。丸井はパートを含め社員の皆さんの対応が良く、管理・運営もしっかりしている優良企業だ。今後もKABSの姿勢を示しながら、「マルイファミリー海老名」とじっくり取り組んでいきたいと考えた。単発のイベントだけで終わらせず、主催者側と持続的なパートナーシップをつくりあげていくこと、これが第2の取組課題である。

「ここの野菜はどこに行けば買えるの?」、「一昨日買って食べたらおいしかったからまた来た」などという声を、多くのお客さんから頂いた。このイベントに強い関心を持って頂き、KABSの情報誌「金次郎新聞」を持ち帰る方もたくさん見られた。とても残念なのは、電車で1時間ほどもかかる横浜にしか常設の店舗を持っていないことだ。これでは一度ファンになって頂いたお客さんに対し、申し訳ないし、せっかくのチャンスを逃すことになる。常設コーナーを設置したり、通販などで対応したいところであるが、そうした仕組みづくりには時間がかかりそうだ。これが第3の取組課題であろう。

大変失礼な言い方だが、主催する店舗にとって催事は、客寄せパンダと言う性格が強く、採算性はあまり重視しない。しかし、出店者側は、相当のコストと手間がかかり、イベントであろうと赤字で運営する訳にはいかない。全国の生産者が行っている都市部でのマルシェは、人件費・交通費などを勘案すると、そのほとんどが大赤字である。マーケティングや研修の場としての意義はあるが、その都度赤字では持続的な取組はできない。この度のKABSのイベントの収支は、私の人件費(流通研究所の規程では1日10万円)を除けば黒字だった。販売委託手数料が安かったこと、既存の物流ルートを活かせたこと、売行きがよく商品ロスが少なかったことなどが勝因である。東京・横浜の都心などで同じイベントをやったらおそらく大赤字であろう。採算がとれるイベントの継続的な実施手法の確立、これが第4の取組課題と言えよう。

話しは少しずれるが、丸井の担当者からは、流通研究所の実績・ノウハウを踏まえ、全国の特産品を即売するようなイベントが出来ないかという宿題を頂いた。これまで私自身全国100か所以上の地域で仕事をさせて頂いているし、名刺交換をした生産者は1,000人以上に上る。神奈川県の若きエース達と共に取り組むKABSの本質を変えるつもりはない。しかし、例えば全国の活性化施設や篤農家の特産品を一元的に販売するなど、より広いフィールドでの事業展開を進めることにより、KABSとの相乗効果を高める手法も考えられる。「かながわアグリビジネスステーション(KABS)」を核に、「全国アグリビジネスステーション」機能を併せ持った展開を行う、これが第5の取組課題であると考えた。

この度にイベントを通して、様々なことを考え、今後の取組課題も明らかになった。先ずは出来るところから一つずつ実践していきたい。そしてその結果は、このブログでも随時報告していく。