第30回 | 2010.12.27

まだまだできる道の駅! ~道の駅整備運営計画策定のポイント~

現在道の駅は全国で約900件、常設型直売所は約5,000件存在するが、今後も同様の施設はまだまだ出来そうだ。今年度は道の駅や大型直売所の整備・運営にかかわる仕事が実に多く、山口県だけでも2件の業務を行っている。流研はソフト・ハード一体型の業務が出来る会社として、これまで全国20件を超える道の駅・直売所の開業に結び付けてきた。いずれも大成功しているところがうちの自慢だ。ソフト業務では、管理・運営組織や出荷者組織の設立、特産品開発、農産物出荷計画、人材・組織育成、さらには現地での開業支援やアフターフォローまで行う。ハード事業では、基本構想・基本設計、実施設計・施工監理に加え、交付金等の事業申請まで手がける。全ての業務を解説したいところではあるが、紙面が限られているので、本日は道の駅の整備運営計画の策定にあたってのポイントを挙げてみたい。

先ずは整備の目的を内外に対し明確にすることが重要である。道の駅であることから当然道路利用者の利便性・安全性の提供といった公益的な目的がある訳だが、それ以外にどのような目的を持たせるのか明確にする必要がある。地域活性化という漠然とした言葉ではなく、いかなる事業効果を狙っていくのか、具体的な数値目標を設定することが望ましい。どの施設でも概ね共通する目的は、農産物直売による農業振興効果であろう。この場合、例えば「開業3年後に300名の出荷者が平均100万円の所得増を達成する」ことを目標とするといった設定方法がわかりやすい。その他としては、地域食材を使った特産品の開発や、地域女性グループの育成、観光客増加に向けた地域情報発信、さらには地域雇用の創出などの目的が考えられる。目的が明確になると、道の駅で整備すべき施設・機能とその規模は自動的に導き出すことができる。また、その後の議会や関係者の理解・合意を得るためにも、交付金の円滑な申請のためにもこの作業は極めて重要である。

2番目のポイントは立地の選定と用地の確保である。用地が決まらない計画は所詮絵に描いた餅に終わる。当然のことながら普通車両の交通量が多い立地が望ましい。断言はできないものの、やはり施設利用者数や売上高は面前交通量と概ね比例する関係にある。経験から言うと、昼間12時間の交通量が1万台なら駐車場台数は概ね100台程度、敷地面積は概ね1haは必要となり、年間売上高は3億円は期待できる。ただしこのような好立地はなかなか無く、あっても地権者の同意が得られない、もしくは開発する上での各種のしばりがあるケースが多い。中でも優良農地を転用して整備する場合は、土地収用法の適用を受ける必要がある。土地収用法とは本来学校や病院、公園など公共施設の整備のために、例外的に開発を認めようというもので、商業施設などは対象にならない。これまでの実務経験を踏まえると、土地収用法による道の駅整備の場合、基本的には農村公園として整備すること、敷地全体の中で商業的施設や駐車場面積の割合は50%以下に抑えることなど、整備計画上留意すべき点が多々ある。なお、駐車場などを国土交通省に整備してもらう場合、計画段階から立地・規模などに関わる綿密な協議が必要となる。

3番目のポイントは、施設の規模・機能であろう。道の駅では24時間誰でも利用可能なトイレ・駐車場・休憩施設に加え、地域農産物や特産品などを販売する物販施設、地場料理や軽食・テイクアウトなどを提供する飲食施設が併設される。面前道路の交通量が1万台あれば、先ずは3億円の売上達成をひとつの目安とすることができる。この場合の施設規模の目安は物販施設計300㎡、飲食施設150㎡程度になろう。施設の規模は面前道路交通量などから導き出される利用者予測と、売上・収支目標などによって決定されることになる。加えて地域情報の発信施設や交流館・体験施設なども欲しいところである。施設の機能は、施設整備の目的及び運営体制などによって決定される。規模・機能はともに予算によって制約されるが、予算がないからといって小さ過ぎる施設を作ってしまうと、施設の魅力がなくなり売上確保のためのサービスも提供できず、赤字運営を強いられる結果になりかねない。

4番目のポイントは運営管理・運営組織と出荷・出店者のあり方である。現在道の駅のような施設では、概ね指定管理者制度が導入されることになる(トイレなど公益的施設は一部行政直轄での管理方式もある)。問題は指定管理者を誰にするかである。以前は第3セクターを設立して指定管理者にするケースが大半であったが、行政負担を減らすためにも100%民活組織にしたいところである。全国的にも生産者や商工業者、市民などが共同の組織をつくり道の駅の管理運営にあたる事例が増えてきた。しかし民活組織設立のためにはキーマンやキーとなる既存組織の存在が欠かせない。一方、地域には多くの経験や高い知見を持って定年を迎え、地域活性化に貢献できないかと考えている人材が多く存在することから、こうした人材たちを発掘しキーマンに祭り上げることも可能である。また、設立に向けた地域住民による検討会やワークショップのメンバーを、そのまま管理・運営組織の中核に移行する手法も有効である。飲食・加工などの一部を指定管理者のもと地域の企業・団体にテナント出店させる手法も考えれるし、体験・交流など一部の施設の運営を地域のボランティア組織などに委託する手法も考えられる。

併せて、誰がどのように出品するのかを決めなければならない。せっかく利用者があっても売るものがなければ当然売上はあがらないし、施設の魅力もなくなる。地域農産物を計画的に出荷できる組織づくり、商工品販売の仕組みづくりが重要になる。地場産品や開発商品にこだわった品揃えは大切であるが、地域直売所と異なり国道利用者などを主なターゲットとする道の駅では、県内・広域の土産品の販売割合が高い点にも着目する必要がある。運営者の経営を考えると、農産物の販売手数料は概ね15%であるのに対し、土産品等は25~30%の手数料を確保でき、土産品の取扱が経営安定に寄与するといった側面もある。

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そして最後のポイントは財源の確保である。用地の取得、駐車場・トイレの整備は国土交通省にやってもらい、施設は過疎債や地域活性化プロジェクト交付金を活用したいというのが地域の目論見であろうが、当然のことながら財源確保にあたっては非常に多くの労力・知力を要することになる。

道の駅は究極の地域活性化モデルであり、このモデルを考えた国土交通省の方は天才である。しかし道の駅はこのように、計画段階であっても多くの検討課題を抱えており、開業までこぎつけるにはさらに幾多の難関が待ち受けている。これの課題を解決し、ひとつひとつ答えを出して行くのが私たちの責務であり、コンサルタントとしての総合力や実践的な能力が問われる仕事でる。先ずは今年度、現在取り組んでいる仕事を丁寧に、確実に進め、夢の実現に向け地域とともに前進して行きたいと思う。