第51回 | 2011.06.13

かながわアグリビジネスステーション設立のご案内 ~新オフィスに移転しました!~

流通研究所は、神奈川県厚木市に自社ビルを新設し、平成23年6月13日に事務所を移転しました。この度のコラムは、事務所移転を契機とした新たな事業展開と今後の抱負について述べてみたいと思います。

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流通研究所は平成4年の設立以来、豊かで活力ある地域づくりに貢献する企業として、北は北海道から南は沖縄まで、全国200ヵ所を超える地域の支援を行って参りました。特に、農業や流通分野においては、国内で数少ない民間の専門コンサルティング会社として、他社の追随を許さないノウハウと実績を誇り、広く社会に貢献してきたと自負しています。この度、来年20周年を迎えるにあたり、神奈川県厚木市の新社屋に移転しました。この新社屋は、弊社が、新たなステージへ向け、さらなる飛躍を遂げる拠点として、万感の想いを込めてつくりました。

設計は、兼ねてから懇意にしている結城設計事務所の結城先生に、建設は、地元の中和工建さんにお願いしました。建築面積は50坪強、2階建てのこじんまりした建物ですが、スタッフ全員の要望を踏まえ、随所に工夫を凝らした芸術品です。1階は20名程度の会議や研修、マルシェなどのイベントスペースとして活用できます。キッチンがありますので食事も提供できます。2階はコンサルタント業務の事務室で、この社屋の心臓部です。テントライトから入る採光を受けながら、15名程度の職員が仕事に打ち込める明るく快適な空間です。屋上は緑化やミニ菜園などを計画しており、地域の方々との交流の場として、夏は最高のビアガーデンなどとして活用します。随所に設計上の工夫があり、高度な施工技術を施した逸品です。

15名程度の小さな会社が、この不況の最中に、自社ビルの建築に踏み切った最大の理由は、「根の生えた企業になりたい」ことにありました。神奈川県のど真ん中に、根を生やし、この土地で、腹をくくって仕事をしたいと思いました。流研の活動フィールドは全国です。でも、先ずは根元・足元から、私達が思う豊かな社会作りに貢献したい、これまでやってきたこと、うちができることを実践して行きたいと思いました。そこで流通研究所ではこの度、この新社屋を拠点として、神奈川県内の若手農家を中心とした、経営・生産・販売、様々な段階においてかながわ型の新たなアグリビジネスをつくり出すネットワーク “かながわアグリビジネスステーション(KABS:カブス)”を展開して参ります。

神奈川県は全国に先駆け、「都市農業推進条例」を制定し、県をあげて都市農業を推し進めている地域です。人口は800万人を越し、横浜・川崎・相模原などの政令指定都市を持つ一方で、横浜・鎌倉・箱根など全国的にも有名な観光地があります。また、多くの大手企業が本社や拠点工場を置き、豊富な商圏人口を背景に商業活動も活発です。このような環境のもと、水稲、野菜、果樹、花卉、畜産の全ての分野で農業が息づいています。特に近年は、若手農家が増加傾向にあり、都市近郊型という優位性を踏まえ創意工夫に満ちた農業にチャレンジしています。KABSとは、農家だけでなく、神奈川県の特長を活かし、多様な企業や行政機関、大学等の研究機関、さらには消費者を結ぶことで、双方の課題を解決するとともに、新たなアグリビジネスを創出する目的を持っています。

【神奈川県において流研が考える事業イメージ】

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KABSでは先ず、神奈川県の農業・農村に係るシンクタンクとしての機能を持ちたいと思います。既に県内では様々な農家組織やネットワークがありますが、これらの組織と連携をとり、先ずは彼らの活動を応援し、その中で新たなビジネスモデルを生み出していきたいと思います。具体策については、これより一つずつ実行していきます。今年度は、実証実験を兼ね、事務所の1階や屋上を活用した交流事業や小規模イベント事業などの実施を検討しています。本格的なビジネス化は、次年度以降になると思いますが、神奈川県の特徴を踏まえると、以下のようなことが考えられます。

前回「野菜くらぶ」の特集を組みましたが、その中で「サングレイス」というグループ会社は、モスバーガーが過半以上の出資金を出しつつ議決権は1/10で、「金は出しても口は出さない」という企業の農業参入方式をとっています。県内の多くの企業が地域農業を応援して行きたいと考えている一方で、県内の若手農家の経営基盤は総じて脆弱です。そこで、多様な企業から出資を仰ぎ、若手農家が法人化するモデルが考えられないかと思います。企業側のメリットとしては、企業給食で出資法人の農産物食材を使ったり、専用の体験農場を管理・運営してもらったりすることで、社員福祉の向上と企業のブランド化を実現できるでしょう。また、一歩進んで、企業側が農産物の販売を担うなど、新たなかたちでの農業参入のモデルが考えられないでしょうか。このようにKABSでは、企業と若手農家をつなぐ手法を研究して行きたいと思います。

また、平成21年度に神奈川県からの委託で実施した、かながわ型クラインガルテンのビジネス化も、研究テーマの一つです。県内にけるコテージ付きの市民農園の開設については、農地法や市民農園促進法など法的規制が多く、自治体が公然とビジネスモデルを提唱するにはハードルが高いことが分かりました。しかし、都市住民のニーズは極めて高く、相当の資金を出してでも、クラインガルテンを開設して欲しいという要望があることも分かりました。クリアすべき課題は多いですが、農家(農地の提供)と都市住民(資金の提供)が協働組織をつくり開設主体になる手法であれば、可能性は高いと考えています。このようにKABSでは、都市部住民と若手農家をつなぐ手法を研究して行きたいと思います。

まだまだ案はたくさんあるのですが、今後県内の若手農家や関係者と検討を重ね、若いスタッフのパワーで、一つずつかたちにして行きたいと考えます。

皆様、新生流通研究所及びKABSの活動に、どうぞご期待下さい。そして、読者の皆さん、是非一度新社屋にいらして下さい。夜が更けるまで、明日の農業の姿について語り合いましましょう。