第251回 | 2015.09.07

かながわアグリビジネスステーション、新たなステージへ ~ KABS定例会議より ~

去る9月4日(土)の夜、神奈川の新たなアグリビジネスを創造することを目的とした、かながわアグリビジネスステーション(KABS)の、本年度2回目の会議を流通研究所の1階会議室で開催した。総勢約30名が参加し、流通研究所からの今後の運営方針などの説明に続き、意見交換を行った後、恒例のワンコイン会費による懇親会を行った。
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設立から3年目を迎え、「金次郎野菜」ブランドを御旗に、地域の若手専業農家へ庭先集荷を行い、買取を基本に、野菜ソムリエが販促活動を行いながら都市部の店舗で販売するという「金次郎野菜プロジェクト」は、今年になって急成長している。新たに愛川町の生産者が加わり、出荷者は現在44名まで拡大している。一方、販売先は、基幹店舗であるあざみ野ガーデンズに加え、大丸東京、上野松坂屋など順次拡大している。こうした状況に対し流通研究所は、自社物流体制の強化やラベラー発券機の購入、野菜ソムリエの増員など、推進基盤を強化してきた。

特に今年は、神奈川県の事業と連携することで、出荷者・販路の拡大に加え、県内における流通システムを再構築しようと動いている。県はこれまで、県内の生産者と実需者をつなぐマッチング商談会などを開催してきたが、物流・商流が課題になって、一過性の取引に終わるケースが多かった。県内では高い技術を持ち特色ある農産物を生産する篤農家が数多く存在し、小売店や飲食店・ホテルなどは県内農産物の取扱いに積極的であるものの、こうした課題から両者の継続的取引は難しい状況にあった。そこで流通研究所が、KABSの仕組みを活かして物流・商流を担い、実需者ニーズに対応できる産地づくりを支援することで、事業終了後も両者の取引を継続・発展させていく事業に取り組んでいる。

この度の会議では、その他にもいくつかのKABS運営方針を示した。一点目は、流通研究所から生産者によるバーコードの貼り付けのお願いである。これまで、店舗において流通研究所のスタッフや野菜ソムリエがバーコードを貼り付けていたが、その作業により店舗での陳列時間が遅くなり、その分販売の機会ロスが生じていた。今後さらに物量が増加する中にあって、円滑で効率的な販売を進めるためにも、流通研究所が用意するバーコードを生産者にあらかじめ貼って出荷するようお願いした。生産者側の負担増になるにもかかわらず、全員気持ちよくこれに応じてくれたことに心から感謝したい。

その中で、バーコードの貼り付け位置について多くの意見が出た。商品ごとに「金次郎シール」を右上に、バーコードシールは左下に統一的に貼り付ける方法を提案したが、商品によっては中身が見えにくくなること、重ねて陳列する場合下にバーコードが貼ってあると消費者に価格などが見えにくくなることなど多くの意見が出され、結果として生産者が各商品の荷姿などに併せ、それぞれ工夫し最適な場所に貼ることに落ち着いた。自分の商品を少しでも売場で魅力的に見せ、売りやすくしようという意欲がよく分かり、さすがKABSのメンバーだと感心した。

今後のKABSの方針として、契約栽培の拡大、金次郎ブランドの加工品開発、頒布会の開始などを流通研究所から説明し、参加者からそれぞれ意見を頂いた。契約栽培については、来年度向けに、白たまねぎや高糖度キャベツ、県のオリジナル品種である湘南ポモロンに取り組むことが決まっている。現在金次郎野菜の品目・品種は200を超えているが、契約栽培をさらに拡大し、新たな特産品づくりに生産者と共に取り組むことで、売り場の魅力とブランド力を強化していく方針である。また、契約取引により、県事業とも連携し、消費者・実需者のニーズに対応したマーケット・イン型の産地づくりも進めていきたい。

現在KABSの基幹をなす事業は、以上説明したような独自の販売事業である。現在卸売業者や小売業者などにより、全国で同様な取り組みが進められており、県内にも競合事業者が出現している。しかし、流通研究所・県内の若手専業農家・野菜ソムリエの3者によるKABSという強化で同じ志を持つ組織が存在すること、買取で販売リスクはあくまで流通研究所が負うこと、生産者とその産品の持つ価値や農産物の持つおいしさを消費者に直接伝え続けていることなどは、営利優先の他の事業者にはまねが出来ないものであると自負している。ただし、けしてうぬぼれることなく、メンバーの所得向上につながるよう、今後も謙虚に邁進していきたい。

KABSに集まる生産者は、それぞれの地域において中核的農家でありキーマンである。私のKABSにおける近未来的な夢は、流通研究所が持つノウハウを活用し、こうしたメンバーと共に、地域の農業振興や活性化に向けた実践的な仕組みをつくりあげていくことだ。これだけの素晴らしい人材が「金次郎野菜」の御旗のもとに集まっている。個々のメンバーが持つ能力、ネットワーク、思いや情熱を最大限引き出し、共に次世代の地域づくりを進めて行きたい。販売事業の強化・拡充はもちろん、KABSは次のステージへの挑戦を準備する時代が来たことを強く感じた。