第57回 | 2011.07.25

『KABS(カブス)』設立のお知らせ ~ 流通研究所、新たなステージへ ~

流通研究所は7月22日の夜、県内若手農家など総勢60名の参加により、「かながわアグリビジネスステーション」、通称『KABS』(カブス)の設立発表会を開催した。当日は、私から『KABS』の内容を説明した後、盟友の山本謙治氏よりショート講演を頂いた。ヤマケンさんの話はいつ聞いても感動と勇気を与えてくれる。今回は、「日本人の食に対する意識は現在欧米に比べ著しく劣っているが、やがて、消費者本位の価格や安全性だけでの購買基準でなく、持続的な経済循環・社会循環にいかに寄与するかという「エシカル(倫理的)」な購買基準が日本にも浸透し、ものの価値が判断される時代が到来する」という内容だった。その後は屋上にビールサーバーを持ち込み、楽しく有意義な交流の場を持たせて頂いた。県内の若手農家に加え、横浜丸中青果の岡田さん、こせがれネットワークの宮治さん、明治大学の竹本先生、県内で最も著名な中小企業診断士の大場先生、電通の西原部長など、多数の方々の参加を頂き、心より感謝申し上げる。

流通研究所はこれまで、北は北海道から南は沖縄まで、全国で事業展開してきたが、今後もナショナルブランドの企業を目指すことに変わりはない。その上で、神奈川県のど真ん中に新社屋を建設したことを契機に、地域に根っこが生えた企業への成長を目指していく。平成24年2月には会社設立20周年を迎える中で、改めて、地元の神奈川県で、きちんと農業・農村の課題に向き合っていきたい。この新社屋が=『KABS』であり、流通研究所の新たな事業展開のステージである。流通研究所のスタッフは皆若く、まだまだ知見もネットワークも不足している。『KABS』の事業を実施することで、県内農業の発展に貢献する一方で、スタッフ個々の能力を高め、持続的発展を遂げる企業としての経営基盤を築いていきたい。

『KABS』とは、農業・農村を愛し情熱を持った人々と共に、神奈川県ならではのアグリビジネスを創造することを目的としたシンクタンクである。『KABS』では先ず、県内の農家・企業・消費者・大学・行政・専門家・応援団など、農業・農村に関わる活動をしているグループ・個人間の交流を図り、点を面に変えていくための取組に力を入れる。次に、農業・農村に関する県内情報を集積し発信するとともに、全国の情勢変化や神奈川県下の有用資源を分析し、アグリビジネスに関する自主研究を進めていく。そして、流通研究所が培って来たノウハウを活用しながら、情報、交流、研究を基軸に、県内におけるネットワークを拡大し、神奈川型のアグリビジネスをかたちにする。さらに、その成果を全国に発信・普及することで、日本の農業・農村の活性化に貢献していくことを目的としていく。

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800万人の消費人口を持つ神奈川県は、時代の扉を開く先駆的農業を生み出す、無限の可能性を持った地域である。例えば、「都市部住民・企業からの資金提供を受けて、農家が2地域居住型クラインガルテンを開設するモデル」、「金は出しても口は出さない企業出資方式により、相互メリットを発揮する農業生産法人を設立するモデル」、「地域の商店街等との継続的な連携により、農産物のブランド化と地域活性化を実現するモデル」、「県内特産品や農家のこだわり食材を安定的に飲食店等に供給し、神奈川県の食文化を創造するモデル」など、独自のアグリビジネスが考えられる。しかし、神奈川県には、ヤマケンさんからも指摘があったように、無限の可能性はあっても、全国に発信できるような特長はなく、農業や食文化の点で顔が見えないのが実情である。

本年度は、研究を重ね、平成24年度に実証・実験を行い、平成25年度以降、随時事業化・自走化を目指す。平成23年度は、『KABS』の着実な前進に向けた研究段階と位置づけ、『かながわアグリビジネス研究会(通称KAB研)』、『かながわアグリビジネスコンサルティング(通称・KABコン)』の2つの取組に着手する。神奈川型アグリビジネスの事業化に向けた自主研究・自主活動を通して、県内情報の収集、県内関係者とのネットワーク形成を進めていく。

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『KAB研』とは、流研が神奈川型のアグリビジネスの事業化を研究する場であるが、誰でも参加できるオープン型の研究会とし、参加者全員が知恵を出し合い思いをかたちにする場にしたい。平成23年8月~平成24年2月までの期間、計7回、毎月最後の金曜日の午後6時から午後8時まで新社屋1階で開催する。内容は毎回、①講師招聘による講義、②神奈川型アグリビジネス(KAB)案の検討の2本立てとし、県内の先駆的な活動家、KAB創出に向けた知見を持つ専門家を講師として招聘する。

『KABコン』とは、流研のこれまでの実績・ノウハウを活かし、情報交換・交流・研究を目的に、県内全域でコンサルティング活動を主体的に行う活動である。当面「みどりの会」(県西地区の若手農家の会)のメンバーを対象に、①個別の経営改善指導、②共同の販路開拓事業を行い、若手農家を支援する。加えて、若手農家だけでなく県内における商工業者を含め、要請に応じて出張し、人材育成研修・講演会開催、交流会・イベント開催、販路開拓・マッチング、農商工連携、特産品開発等の支援などのコンサルティング活動を、持ち出し覚悟で実施する。また、要望に応じて新社屋1階などを利用し、マルシェや交流会なども開催していきたいと考える。

現在、『KABS』のメンバーを募集中である。設立発表会に参加して頂いた方々には、メンバーになることを賛同頂いた。県内農業の活性化という大志を抱く方は誰でもメンバーになることができ、会費や活動義務は一切ない。メンバーには、メール等で随時KABSの活動内容や事業成果などの情報を発信することに加え、KABコンの支援活用を受けられる、1Fを利用できるなどのメンバー特典がある。今年度はともに研究を重ね、次年度以降、メンバーとともに、神奈川型アグリビジネスをかたちにしていきたい。興味・関心がある方は、先ずはご一報頂きたい。

『KABS』は、農業専門のコンサルタントとして、平成の二宮金次郎として、そして流通研究所の経営者として、私自身がどうしてもやり遂げたい、やり遂げなければならないミッションであると考えている。そこで、『KABS』の初代所長は私自ら勤め、不退転の決意で臨む。今後の『KABS』の活動に期待頂くとともに、皆さんのご支援・ご協力を賜りたい。