第58回 | 2026.06.22

株式投資とコト消費の複利化について
~ビル・パーキンス著「DIE WITH ZERO」を読んで感じたこと~

 

会社のコラムで農水産業に関係ない本の読書感想文をアップしていいのか疑問に思っている方がいるとすれば(いたとしても社内の人間だけな気がしますが、、、)、最後にちゃんと伏線回収しますのでご安心を。

妻から(正確に言えばさらに妻の職場の同僚から私宛に)本の推薦があり、久しぶりに仕事と全然関係のない、タイトルのとおり、「死ぬまでにどうお金を使い切るべきか」という内容の本をGWに一気に読破しました。

最近昼休みに同僚とNISAの話をしていたこともあり、この本の中でどのタイミングで投資をして、どのタイミングでお金を何に切り崩すのか、的な話に興味があり当初は読み進めていました。

 

本の内容を要約をすると以下の通りです。

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■本書の結論

「お金は貯めるためではなく、人生の適切なタイミングで“最高の体験”に変えて使い切り、最終的にゼロで死ね」という、従来の貯蓄至上主義を真っ向から覆す人生戦略の本

 

■なぜ「体験」にお金を使うべきなのか

  1. 人生で本当に価値を生むのは「記憶」だから
  • 最終的に人生に残るのは、モノではなく体験の記憶
  • モノ消費は買った瞬間が最大の価値(本を買った瞬間満足して、読まなくなる例)
  • 体験(旅行、挑戦、学び、人との時間)は思い出として何度も反芻され、時間とともに価値が増える、つまり、体験は複利でリターンを生む“投資”

 

  1. 体験には「年齢制限」がある
  • 多くの体験には“賞味期限”がある
  • お金があっても、時間があっても、年を取りすぎるとできなくなる
  • にもかかわらず、多くの人は「老後のために」と体験を先送りするため、体験できる能力を失いお金だけが残る、という“最大の機会損失”が起こる

 

  1. 老後のために貯めすぎるな
  • 「貯めすぎ」は人生の失敗であり、死ぬときに一番多くの金を持っている人が勝者ではない
  • 70代・80代になると行動力・健康・新しい体験の感受性が大きく落ち、その時に大金があっても、使えないお金=無意味なお金になる

 

  1. 「最適支出曲線」という考え方
  • 若い時は収入が少ないが、体験価値は最大である、積極的にお金を使うべき
  • 中年期に収入がピークとなり、家族・仕事・経験に使うべき
  • 老年期には必要最低限、医療・生活費中心となっていく

 

  1. ゼロで死ね、は“浪費しろ”ではない:「DIE WITH ZERO」の本当の意味
  • ダラダラ貯め続けるのではなく、人生設計を前提に、意図的・戦略的に使い切る
  • 人生全体で、記憶と充足感を最大化するようにお金を配置する
  • すなわち、体験する力がある時に体験にお金を使うということで、体験は人生の「配当金」、先送りすると二度と回収できない、お金は使うタイミングがすべて

 

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著書の中ではFIRE(経済的自立・早期リタイア)や貯蓄重視の考え方そのものを否定はしていませんが、「目的を見失った貯蓄・FIRE」に強い警鐘を鳴らしていて、貯蓄やFIREは「手段」であって「目的」ではなく、若いころの体験価値が最も高い時期を失うことを否定しています。

一方、家族や生活のために一定度の貯蓄や早いタイミングからの投資による複利の効果自体も否定しておらず、生活防衛資金や将来不安への備えは必要であるが、「体験投資枠」は必ず確保して有効に活用する(使い切る)ことを説いています。(あと、健康にもお金を費やせ、という指摘もあり、グサッときています、、、笑)

 

この本を読んで、今まで無意識であったけど「なるほど」と感じたことが、「体験は複利でリターンを生む“投資”」という言葉です。

 

自分自身も小さいころに家族で旅行した沖縄旅行で海に触れたことがきっかけで、海が好きになり、魚が好きになり、水産業に興味を持ったという体験が複利に複利を重ね、転職して今この会社にたどり着いた経緯があります。

 

過去、海業のコラム(本質的な海業の意味について考える)で、漁業体験について「漁業者の所得向上につなげることも重要であるが、むしろ漁業・漁港・漁村・水産物に興味を持ってもらい、長い目でみて消費拡大や担い手の確保により、水産業全体への波及効果を狙った取り組みをすることこそが本質的に漁業の持続性へとつながるのではないか」と論じたが、まさにこの視点が重要だと再認識しました。

 

農業でも漁業(水産業)でも、後継者不足・担い手確保は重要な課題です。どちらの業界でも法人化による経営の安定化や企業参入の取組も盛んになってきていますが、短期的には効果的ですが、長期的には子供たちへのこの“農業・漁業体験の複利化”を進めていくことが効果的ではないでしょうか。

先日、とある自治体のワークショップで、新規就農した若者に、就農のきっかけを聞いたところ、小さいころにおじいちゃんのトラクターに乗せてもらったことで、農業へのあこがれが生まれ、農業高校から農業大学を経て、すぐに就農したという話を聞かせてもらいました。

 

わが社も「未来の農水産業に種をまく」という使命を掲げていますが、業務を通じてももちろんのこと、自社としても農水産業の体験価値を提供し、未来の担い手を育むような存在になりたい、そうなることが巡り巡って会社を大きくする(=日本の農水産業を持続的なものにする)のではないか、と感じたGWでした。

 

子供を始めとする一般消費者が農水産業に触れる接点をどう増やしていくか、ということを、改めてしっかりと考えていきたいと思います。

自分自身を振り返っても、子供との時間、ただ過ごすだけでなく、自分自身もそうだったように、何か人生のきっかけになる体験をさせてあげたいな、と改めて感じています。そして自分や妻との時間にも投資せねば、、、と。健康第一に、我が社は物心両面の幸福を目指す会社であることから、新年度公私ともにこの本から得られた教訓を意識していくことを宣言します!


主任研究員 片瀬 冬樹