代表コラム バックナンバー第6回 | 株式会社流通研究所





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代表コラム-二の釼が斬る!-

  • 平成の「二宮金次郎」こと流通研究所代表の釼持雅幸が、激動する農業情勢を独自の視点でレポートします。地域の農業政策立案に、あるいは農業経営の改善にお役立てください。

2010.7.21 第6回
流通改革は進む! ~加工・業務用取引におけるビジネスチャンス~

 いわゆる「家庭における食の外部化」の進展により、野菜の需要は加工・業務用が市販用を上回って久しい。これまで安価な中国産などに依存して来た加工・業務用原料は、安全・安心志向の高まりから、近年国産へシフトする傾向にある。加工メーカー・外食店・惣菜店などの実需者が産地と直接契約する加工・業務用取引は全国で本格化しており、産地にとってもはや無視できない取引形態となりつつある。既に、先進的なJAや農業法人ではこうした取引を拡充しており、安定した農業経営の実現に結びつけている例も多い。今回はいくつかの品目に着眼し、加工・業務用取引のビジネスチャンスを探ってみたい。

 トマトは加工・業務用途でも、需要が最も高い品目のひとつであり、近年サラダメニューの拡大を受け、外食・中食と産地との直接取引が盛んである。サラダ用ではカットした際にゼリーの部分が落ちにくく発色が優れている品種が望まれ、S玉・M玉中心の取引が中心である。一方、スライスして使われるサンドイッチ用では、歩留りが良いL・2Lが取引の主流となる。いずれも見た目も重視されることから、キズものや変形したものは対象外である。その中で着眼したいのは、規格外品(D品)の加熱調理用トマトの取引である。ファミリーレストランではパスタメニューを料理する際ピューレ製品を利用するが、本格的なレストランでは料理の風味や食感を上げるため、刻んだ生食用トマトを加えて調理するケースが多い。このような用途では産地が廃棄しているD品で十分であるが、市場に出回らないことから、実需者は1kg500円の規格品を仕入れざるを得ない。規格外品を1kg200円で入手できれば、キズの部分のカットに多少の手間がかかっても、実需者にとって大幅なコスト削減につながる。荷姿は従来の4kg入り段ボールではなく、ばらばらの大きさのトマトを詰め込んだコンテナ納品が求められることから、産地側の出荷コストも低減できる。ニーズを持つ実需者の販路開拓は大変であるが、D品が宝に化ける可能性がここにある。

 じゃがいもは、ポテトチップス用などに、北海道を中心に大量の加工用取引が行われている。また、外食・中食においてもサラダやコロッケ用に産地との取引実績は高いが、歩留りを考慮していずれもL、2Lの規格が求められる。この中で、着眼したいのはS玉以下の小玉の取引である。近年、加工機器の能力が格段にあがり、10kg単位で機械に入れると自動的に皮むきができる機種が登場し、外食チェーンはもちろん給食センターなどでも普及しつつある。この機械の利用条件は同じ規格を揃えることにあり、S玉とL玉を一緒に機械に入れるとうまく皮むきができないという。S玉は調理の手間がかかることから市場価格は低く、これより小さい規格は市場ルートでは販売できないが、最新の皮むき機を導入しているところでは確実な需要が存在する。先ずは地域の給食センターの機械導入状況を把握し、食育の観点からアプローチすることが有効であろう。

 ほうれんそうは、外食・中食産業において、おひたし、ごまあえ、バター炒めなど多様な調理用食材として一年を通して利用されている。家庭用の規格が概ね25cmの丈であるのに対し、加工・業務用は45cm以上で葉肉が厚く大きい規格が求められる。以前は中国産の冷凍ほうれんそうが多く利用されてきたが、残留農薬事件をきっかけに、輸入量は激減している。多くの外食チェーンでは、国内産地から収量が豊富な時期に大量に買い付け、自社で瞬間冷凍し、年間を通して利用するといった仕組みを作り上げている。25cm丈という規格はスーパーが作り上げた規格であり、冬場のほうれんそうでは未成熟の大きさである。また冬場のほうれんそうは夏場と比べて農薬散布回数が少なくて済み、かつ栄養価も高い。そこで、産地において冬場に大型のほうれんそうを作り、カット・洗浄・冷凍までの一次加工を行い、冷凍食品として販売することを検討したい。すでにいくつかの生産法人などが同様の取組を開始しており、高い収益性を発揮している。

 ねぎの業務用途では、Sも2Lも混在して重量で取引される、いわゆる「ぶっ込み」という取引形態が存在する。そば屋では大量の千切りねぎが使用されているし、コンビニ惣菜のそばにも必ずねぎが使われている。実需者は、カット機械を導入して大きいものでも小さいものでも千切り・刻みにしており、規格より重量・価格を重視する。但し、青い部分、根の部分はあらかじめカットして、白い部分のみを供給することが求められる。生産者にとっては選別や個包装、箱詰めの手間が省けるとともに、市場流通では価格がつきにくいSや3Lなども販売も可能になる。特に近年、実需者の作業の外部委託化が進み、仲卸業者などがカット野菜事業に着手している。こうした業者との提携により「ぶっ込み」を前提に、国産品としての優位性を活かした取引を実現したい。

 加工・業務用取引のポイントは、マーケットをいかに掴むかにある。規格外品であっても需要は存在するし、レストランのメニューや惣菜商品をよくよく見て考えれば、誰でもビジネスチャンスを見つけることができる。これまでの産地の反省点として、市場に持っていっておしまい、自分達がつくった農産物がどこでどのように使われているのか、食べられているのか考えてもこなかったことが挙げられる。加工・業務用取引へのチャレンジを通して、マーケティング視点に立った産地への転換を目指したい。


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プロフィール           P1060154-1.jpg


釼持 雅幸(けんもつ・まさゆき)
shadow_gry_Right.png株式会社 流通研究所 代表取締役。昭和35年11月24日生まれ。
shadow_gry_Right.png神奈川県小田原市出身。
shadow_gry_Right.png立教大学経済学部卒業、国際協力事業団青年海外協力隊を経て、(株)富士経済に入社。
shadow_gry_Right.png平成8年に流通研究所入社、平成18年8月に代表取締役に就任。
shadow_gry_Right.png中小企業診断士、二級建築士。
業務経歴
shadow_gry_Right.png農業及び地域活性化の専門コンサルタントとして、これまで計画づくりや実践指導等に携わる。
shadow_gry_Right.png実績件数100件以上。
その他の活動
shadow_gry_Right.png農林水産省、県、市町村の各種委員を歴任。
shadow_gry_Right.png現在、農林水産省FOOD ACTION NIPPON部会委員・アワード審査員。
shadow_gry_Right.png農産物のブランド化、加工業務用取引、農産物直売所、地産地消、等のテーマで講演会多数。
ワーク・ライフスタイル
shadow_gry_Right.png休みの日は早朝から畑仕事で精を出し、弓道場に通って精神力を磨く。
shadow_gry_Right.png料理大好き、4人家族の主夫。食べることはもっと好き。自分で作った旬の野菜に日々舌づつみ。
自慢できる会社のいいところ
shadow_gry_Right.png若くて、有能で、心から信頼できるスタッフ達。宝物であり同志。
shadow_gry_Right.png社会的使命に燃えて、みんなが助けあい、励ましあって目標を達成する社風。
会社の中で嫌いなところ
shadow_gry_Right.png貧乏暇なし。もう少し余裕が欲しいところ。
これからの夢、やりたいこと
shadow_gry_Right.png「農」を基軸に生産者も消費者も流通業者も持続的に発展する、真に豊かな社会をつくりたい。
shadow_gry_Right.pngスタッフ個々が夢を追い続け、スタッフの家族が幸せを感じ続けられる会社づくり。

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