代表コラム バックナンバー第39回 | 株式会社流通研究所





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代表コラム-二の釼が斬る!-

  • 平成の「二宮金次郎」こと流通研究所代表の釼持雅幸が、激動する農業情勢を独自の視点でレポートします。地域の農業政策立案に、あるいは農業経営の改善にお役立てください。

2011.3.7 第39
絶対反対!TPP ~ TPP参加論議の矛盾点 ~

 内閣支持率が急速に低迷し、この6月に方針を明らかにすると公言していたTPPは、政局がらみでとても不透明な情勢になってきた。私は政治云々を言うのは好きではないが、このTPPについては強く反対している。というのは、多くの国民が正しい知識を持たぬまま、単なる開国というイメージで躍らされて、賛成しているように思えてならないからだ。本日は、TPP参加論議の矛盾点を極力冷静に分析しつつ、私がTPPに反対する理由を整理してみたい。

 第1の矛盾点は、これまで民主党政権が進めてきた、戸別所得補償、食料自給率向上、6次産業化のいずれもが、TPP参加とまったく逆な結果を招くことだ。カルフォルニア米はまずくない。輸入自由化ともなれば、アメリカなどでは早急に品種改良と栽培技術の改善を重ね、日本の米におとらぬ食味の米を必ず作ってくる。これまでの開発輸入の経緯からも明らかなように、恐らく日本の商社が先頭に立って技術移転を進め、日本向けの米輸出ビジネスを仕掛けてくるだろう。その価格が1/4となれば、間違いなく業務・加工用は輸入米に走り、多くの国民も国産を買い支えはしないだろう。やはり農水省の見解どおり9割の日本の産地は全滅するだろう。現在、日本の米の年間生産額は約2兆円強だ。国税から2兆円を戸別所得補償にまわせると言うのか。それが無理だとするとこの制度自体は崩壊することになる。食料自給率も農水省の試算のように40%から14%になる可能性も高いのではないかと思う。

 現在、消費が拡大している米粉関連商品は、今後期待される6次産業化の典型的なビジネスモデルであるが、自由化となれば、この米粉だって海外から買い付け、米粉パンを製造・販売すればよい。私が力を入れてきたFOOD ACTION NIPPONなんて茶番もいいところだ。一番許せないのは、多くの農家や食品メーカー、地方自治体やJAなどが、民主党の政策に従い歯を食いしばって軌道修正してきた努力を台無しにして、かつ奈落の底に突き落とすことだ。参加国が例外なき無関税化だと何度も言っている中で、米は例外品目になるなどと言う希望的観測でTPPを考えるのは甘いと思う。

 第2の矛盾点は、TPPに参加しても、日本の農業になんら輸出メリットは発生しないことだ。TPPに参加すれば国産農産物を有利な条件で輸出できると勘違いしている人が実に多い。TPP交渉に参加している9カ国のうち、シンガポール、マレーシア、ベトナム、ブルネイ、ペルー、チリとはすでにFTA(2国間自由貿易協定)を結んでおり、TPPに参加しなくてもこの6カ国とは自由貿易は進むことになる。中国はまったく参加する気はないし、韓国の参加も見込めないだろう。中国は今後、日本にとって最大の農産物の輸出市場になることは間違いないが、肝心の中国が参加しないのなら、日本にとってTPPへの参加のメリットはほとんどない。

 逆に問題は、農産物の輸出大国であるアメリカ、オーストラリアがTPP交渉に参加していることだ。現在9カ国のGDPの合計は16兆ドルであるが、そのうちアメリカが88%、オーストラリアが6%である。したがって9カ国との自由貿易と言いながら、その実態はこの2カ国との自由貿易になる。米、小麦、乳製品、砂糖、牛肉の輸出国にとって、高い関税で国内市場を守っている日本のTPP参加は、どれほど喜ばしいことか。これらの国に輸出できる農産物があれば良いが、遠距離にある農業大国に輸出できる農産物など日本にはない。つまり、TPPに参加すると、輸入農産物は大量に入って来るが、輸出農産物は何もないということになる。


 第3の矛盾点は、経済産業省が試算したTPPに参加しない場合のマイナスの経済効果の計算方法だ。農林水産省の試算にも疑問が残る点はあると思うが、経済産業省の試算は全くもっておかしい。経済産業省は試算にあたり、中国やEUなどとのFTAは締結せず日本が現在の鎖国状態を固持する、韓国は米国・中国・EUのすべての国とFTAを締結すると仮定している。その結果10年後は、自動車・電気電子・機械産業の輸出分野で韓国に負けてしまい、日本の輸出額が8.6兆円減少するとしている。よく考えるまでもなく、中国もEUもTPPとは関係なく、試算に当たっての仮説の前提がまったくナンセンスであることが分かる。自動車のアメリカの関税率はわずか2.5%である。この2.5%をなくすことで韓国に本当に勝てて日本は豊かになるのか。そもそも韓国に勝つために、あるいは2.5%の関税撤廃のために、日本の農業生産の、農地の半分は捨てようという議論はどう考えてもおかしい。

 第4の矛盾点は、先進事例としての韓国の農業政策の報道だ。韓国は自由貿易を推進するため、農業構造を大きく変革させた先進事例として取り上げられている。1990年代、零細農家中心の農村に食品加工などを組み込んで産業化するとともに、米・小麦から高付加価値作物に転換して輸出を目指す農業へと大きく舵を切った。そのために国家予算を農業・農村に集中投下した。集中的な予算投下により園芸作物が定着し、特にパプリカは輸出競争力を持つ作物に成長した。その輸出先は言わずと知れた日本だ。この他にもミニトマト、農産加工品としてのキムチが輸出品目として成長した。一方で競争力が弱い小麦などの生産量を政策的に減らし、1960年代には20万トンを誇った生産量は現在ほぼゼロになった。当然食料自給率は大幅に低下した。それ補うため、ロシアやマダガスカルで土地を購入し、ここで不足する穀物などの栽培して輸入していこうという戦略をとっている。

 こんな戦略を日本は選択すべきであろうか。答えは断固「NO」である。例えば、日本の農家はみんな輸出用トマトをつくり、米はオーストラリアでつくった輸入物を食べればよいのか。2000年以上の米文化を誇る日本から農村風景が消え、集落は崩壊してもいいのか。とんでもない話だ。テレビで韓国を見習えなどと言っている馬鹿な解説者を見ると腹が立って仕方がない。政府もけしからんが、中途半端な知識でいいかげんな報道ばかりを繰り返し、国民に間違った理解を広げているマスコミはもっとけしからん。

 そもそも日本の農産物の関税率は12%、これに対しEU諸国の平均は約20%、スイス約50%、韓国は約60%である。つまり先進国の中でも関税率は低く、日本の農産物市場はすでに開放されているのであり、この国の維持、国民の自給食料の確保のために、特定品目のみを保護しているのである。長期的に見たら更なる自由貿易の流れは変えられないし、そうした時代が来ることを視野に入れて、国内農業構造改革を進める必要があるだろう。ただしTPP参加=自由貿易の道筋ではない。ましてや国民に正確な知識を与えないで進める政策は売国行為である。私はこんな矛盾だらけ、うそだらけのTPP参加には断固反対である。



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プロフィール           P1060154-1.jpg


釼持 雅幸(けんもつ・まさゆき)
shadow_gry_Right.png株式会社 流通研究所 代表取締役。昭和35年11月24日生まれ。
shadow_gry_Right.png神奈川県小田原市出身。
shadow_gry_Right.png立教大学経済学部卒業、国際協力事業団青年海外協力隊を経て、(株)富士経済に入社。
shadow_gry_Right.png平成8年に流通研究所入社、平成18年8月に代表取締役に就任。
shadow_gry_Right.png中小企業診断士、二級建築士。
業務経歴
shadow_gry_Right.png農業及び地域活性化の専門コンサルタントとして、これまで計画づくりや実践指導等に携わる。
shadow_gry_Right.png実績件数100件以上。
その他の活動
shadow_gry_Right.png農林水産省、県、市町村の各種委員を歴任。
shadow_gry_Right.png現在、農林水産省FOOD ACTION NIPPON部会委員・アワード審査員。
shadow_gry_Right.png農産物のブランド化、加工業務用取引、農産物直売所、地産地消、等のテーマで講演会多数。
ワーク・ライフスタイル
shadow_gry_Right.png休みの日は早朝から畑仕事で精を出し、弓道場に通って精神力を磨く。
shadow_gry_Right.png料理大好き、4人家族の主夫。食べることはもっと好き。自分で作った旬の野菜に日々舌づつみ。
自慢できる会社のいいところ
shadow_gry_Right.png若くて、有能で、心から信頼できるスタッフ達。宝物であり同志。
shadow_gry_Right.png社会的使命に燃えて、みんなが助けあい、励ましあって目標を達成する社風。
会社の中で嫌いなところ
shadow_gry_Right.png貧乏暇なし。もう少し余裕が欲しいところ。
これからの夢、やりたいこと
shadow_gry_Right.png「農」を基軸に生産者も消費者も流通業者も持続的に発展する、真に豊かな社会をつくりたい。
shadow_gry_Right.pngスタッフ個々が夢を追い続け、スタッフの家族が幸せを感じ続けられる会社づくり。

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