代表コラム バックナンバー第11回 | 株式会社流通研究所





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代表コラム-二の釼が斬る!-

  • 平成の「二宮金次郎」こと流通研究所代表の釼持雅幸が、激動する農業情勢を独自の視点でレポートします。地域の農業政策立案に、あるいは農業経営の改善にお役立てください。

2010.8.23 第11回
地域流通が変わる! ~南房総市の農業再生への挑戦~


 南房総市は千葉県最南端に位置し、一年を通して温暖な気候に恵まれ、海の幸あり山の幸ありの、豊かな地域である。この地域において、農業再生に向けた新たな流通システムの構築に向けた挑戦が続けられている。私はこの地域に入って3年目、このシステム構築に向けた調査・研究を支援してきたが、今年度は実行段階に突入し、コンサルタントとして勝負の年を迎えることになる。これまで2ヵ年にわたり多様な調査を実施し、基本計画・実行計画を策定したことに加え、地産地消の促進に向けた市民啓発イベントや、地域飲食店等の地域産品の取扱拡大に向けた実証実験等を行ってきた。そして今年度は、中間支援事業者の流通拠点となる市場的な機能を持った施設の整備、生産情報と実需情報のマッチングに向けた一括受発注システムの導入、中間支援事業の育成と体制整備、さらには都市部実需者との継続的な直接取引に向けた実証実験等を行う。

 全国の多くの地域で、農家の高齢化や価格低迷により、農業・農村の活力は低下傾向にある。その対策として、地産地消や都市部実需者等との直接取引に活路を見出そうとする動きが見られる。しかし、これらの仕組みづくりでネックとなるのは、誰が販路開拓を行い、生産者から農産物を集め、適切に物流し、代金決済まで手掛けるのかという点である。南房総市においても地域のJAがその役割の一端を担っているが、JAはロットと品質で勝負できる品目に限定して首都圏の有力市場に共同販売することが業務のメインになっている。したがって、ロットがまとまらない農産物、規格外の農産物は、JAの取扱対象とはならず、地域の直売所以外に販路はない。南房総市においても「富楽里(ふらり)」をはじめいくつかの直売所が存在するが、市内の全農家にとっては十分な販路とは言えない。一方、市内には多くの民宿・ホテル、飲食店やスーパーがあり、地域農産物の取扱意向はあっても地域内流通の仕組みがないため、地域で多様な農産物が生産されているにも関わらず地産地消は進んでいない。また、南房総市は首都圏から至近距離にあって、なばな、セロリ、ブロッコリー、さらにはレタスなど、12月から2月の冬場に良質な農産物を生産できる特異な産地であり、外食・中食などの実需者との直接取引成立の可能性が極めて高い。つまり、需要があって、それに対応できる潜在能力があっても、両者をマッチングさせる仕組みがなかったと言える。

 そこで南房総市は、需要と供給をマッチングさせる中間支援機能が出来上がれば、多くの生産者の所得向上を実現でき、地域農業を再生することができると考えた。またの機会に詳述するが、どの地域でも地域農業の活性化のためには中間支援事業者の存在は必要になるものの、地域によってその役割を果たす組織像は異なる。すでに同様の機能を地域の有力な農業生産法人が担っている例も見られるし、JAや第3セクターが担うケースもあろう。南房総市においては、地域市場の再生という視点から、卸売機能を持った事業者がその役割を担うことが適切であると考える。既に有力な候補も存在するが、この秋、全体の枠組みを検証し確かな道筋をつけたうえで、中間支援事業者を決定することになる。

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 この仕組みづくりにおいて、もう一つの課題は地域の生産体制の再構築にあると考える。南房総市において、この流通の仕組みに参加する生産者を確保・育成・組織化するのは容易ではない。多くの生産者はJAと直売所へ出荷しているが、高齢化が進む中で、それ以上の向上意欲を持つ者は多いとは言えない。また、新しいものは様子を見てから参加しようという田舎意識が強いことも課題となっている。そこで私は、明確な“玉”を見せて中核的な農家を中心に一本釣りする方法を考えている。明確な“玉”とは、首都圏における実需者との大型取引であり、一本釣りとは農家一軒一軒を回って、地域農業の再生という社会的意義を含めて参加を取り付けることを意味する。

 地域農業の再生へ向けて、これから課題は山積みであるが、極めて優秀な南房総市の職員、そして地域のキーマン達と強力なタッグを組み、これまで皆で積上げてきた思いをかたちにしていきたい。


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プロフィール           P1060154-1.jpg


釼持 雅幸(けんもつ・まさゆき)
shadow_gry_Right.png株式会社 流通研究所 代表取締役。昭和35年11月24日生まれ。
shadow_gry_Right.png神奈川県小田原市出身。
shadow_gry_Right.png立教大学経済学部卒業、国際協力事業団青年海外協力隊を経て、(株)富士経済に入社。
shadow_gry_Right.png平成8年に流通研究所入社、平成18年8月に代表取締役に就任。
shadow_gry_Right.png中小企業診断士、二級建築士。
業務経歴
shadow_gry_Right.png農業及び地域活性化の専門コンサルタントとして、これまで計画づくりや実践指導等に携わる。
shadow_gry_Right.png実績件数100件以上。
その他の活動
shadow_gry_Right.png農林水産省、県、市町村の各種委員を歴任。
shadow_gry_Right.png現在、農林水産省FOOD ACTION NIPPON部会委員・アワード審査員。
shadow_gry_Right.png農産物のブランド化、加工業務用取引、農産物直売所、地産地消、等のテーマで講演会多数。
ワーク・ライフスタイル
shadow_gry_Right.png休みの日は早朝から畑仕事で精を出し、弓道場に通って精神力を磨く。
shadow_gry_Right.png料理大好き、4人家族の主夫。食べることはもっと好き。自分で作った旬の野菜に日々舌づつみ。
自慢できる会社のいいところ
shadow_gry_Right.png若くて、有能で、心から信頼できるスタッフ達。宝物であり同志。
shadow_gry_Right.png社会的使命に燃えて、みんなが助けあい、励ましあって目標を達成する社風。
会社の中で嫌いなところ
shadow_gry_Right.png貧乏暇なし。もう少し余裕が欲しいところ。
これからの夢、やりたいこと
shadow_gry_Right.png「農」を基軸に生産者も消費者も流通業者も持続的に発展する、真に豊かな社会をつくりたい。
shadow_gry_Right.pngスタッフ個々が夢を追い続け、スタッフの家族が幸せを感じ続けられる会社づくり。

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